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ブログ 2026.09.07
相対取引「本当の理由」ー高く売るためじゃなかった
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
「山下さん、うちもそろそろ市場出荷だけじゃなくて、スーパーやバイヤーさんと直接契約して、相対取引を始めたいんです」
こういうご相談、本当によくいただきます。理由を聞くと、たいてい返ってくる答えは同じです。
「高く売れるから」
正直に言うと、私も最初はそう思っていました。市場出荷しかやっていなかった頃、市場価格が高い時に儲かる。それが農業だと思い込んでいたんです。
① 気づいたのは、「高値」の記憶の方が強く残っているだけだったこと
ある時、先輩から言われたことがあります。
「市場価格が高いのは一過性のものだ。それより、意外と安値で取引する時の方が長いんだよ」
ハッとしました。確かに振り返ってみると、市場価格が高騰した時のことは強く印象に残っている。でも、安値でじっと我慢していた時期のことは、いつの間にか記憶から抜け落ちている。人はうまくいった瞬間ばかり覚えていて、我慢していた期間の方は忘れてしまうものなんだと、このとき気づかされました。
相対取引は、価格・数量・納期・決済方法をあらかじめ決めてから栽培・出荷する、いわば「先物取引」に近い形です。出荷前から今年の売上がほぼ100%わかる。「今年はこれだけ確実に入るから、あのトラクターを買おう」といった資金計画が、勘や希望的観測ではなく、確定した数字の上に立てられるようになります。
② 値段を決めてしまうと、儲けを最大化できない。それが最初は苦痛だった
ただ、いいことばかりではありませんでした。値段を先に決めてしまうということは、市場価格が高騰した時の「儲けどき」を取りに行けないということでもあります。これが最初は本当に苦痛でした。目の前で相場が上がっているのに、自分だけ決まった価格でしか売れない。
でも、価格が動かせない以上、利益を増やす道は一つしかありません。生産コストと物流コストを抑え、生産効率を上げること。
「どう高く売るか」から「どう無駄を省くか」へ。ここに意識を向けるようになってから、経営の見え方が変わっていきました。
③ 気づいたのは、「A品だけ高く」より「AB品込みで多少安く」の方が手残りが多いということ
もう一つ、全量買取してくれる業者と組むようになってから見えてきたことがあります。
それまでは、規格の良いA品だけを高く売ることにこだわっていました。でも実際に計算してみると、A品だけを高値で売るより、規格外のB品も含めて全部、多少安い価格でも引き取ってもらう方が、手元に残るお金は多い。廃棄する分がなくなるからです。
畑で作ったものを畑で捨てる。これほどもったいないことはありません。全量買取という仕組みは、単価ではなく「手残り」で経営を見る視点を教えてくれました。

覚悟しておきたいこと
もちろん、相対取引は「約束」でもあります。台風や長雨で自分の畑が全滅しても、「できませんでした」では済まされません。よそから仕入れてでも数量を納品する責任が伴います。市場価格が大暴落したときには、値下げのプレッシャーがかかることもあります。
これを乗り越えるには、信頼できる仲間とのネットワークや、価格の安定した業務・加工用契約を組み合わせるポートフォリオの発想が役に立ちます。

まとめ
相対取引の本当の価値は「高く売れること」ではなく、農業を「一喜一憂する博打」から「予測・コントロールできるビジネス」へと変えてくれることにありました。
小さなテストから始めても構いません。数字で語れる経営を、一緒に目指していきましょう。
農ビジ会では、こうした経営の仕組みづくりについて日々情報交換しています。ご興味あれば無料相談もご利用ください。
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今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!