新着情報
What’s new
ブログ 2026.09.08
お金に困らない農家に共通する、たった一つの質問
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
農業経営の話をしていると、必ずぶつかる壁があります。
「儲かっているか、儲かっていないか」
これを、農園全体の数字だけで見ている人がとても多い、ということです。
売上はいくら、経費はいくら、残ったのが利益。
たしかにそれで合っています。
でも、それだけを見ていると、経営の中で本当に大事なことが見えなくなっていく。そのことに、僕自身、コンサルの現場を重ねる中でだんだんと気づいてきました。
松下幸之助の「ダム式経営」から始まった話
経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんに、「ダム式経営」という考え方があります。
ダムが水を貯めておくことで、干ばつでも大雨でも水量をコントロールできるように、経営も利益を内部に貯めておくことで、何かあったときに耐えられる体力をつくっておく。そういう考え方です。
僕自身、32歳のときに経営が行き詰まり、そこから37歳まで、借金を返しながら作物を切り替え続けた時期がありました。あのときの自分に一番足りなかったのが、まさにこの「貯める体力」でした。今なら、あれは自分の農園の「ダム」がほとんど空だった、ということなんだとわかります。
さらに深堀りすると出てくる「アメーバ経営」
このダム式経営を学び、実際に成功させた経営者の一人に、京セラの稲盛和夫さんがいます。日本航空を1年半で立て直したことでも知られる方です。
稲盛さんの経営には「アメーバ経営」という仕組みがあります。
会社全体を大きな一つの数字で見るのではなく、部門、さらにその下の係やチームまで、それぞれを独立採算の小さな単位として管理する。吉本部長のところは黒字か。岩崎部長のところは採算が取れているか。一つひとつ、数字で確認していく。
これを聞いたとき、農業にもそのまま使える話だな、という感覚がありました。

農作業を「工程」で見ると、違うものが見えてくる
農業の仕事は、いくつもの工程でできています。
土づくり、育苗、潅水、施肥、収穫、梱包、出荷。
普段はこれをひとまとめに「農作業」と呼んでいますが、アメーバ経営の考え方をあてはめると、問いが一つ浮かびます。
「この工程は、単体で採算が取れているか?」
農園全体の利益だけを見ていたら、絶対に出てこない質問です。
数字にしてみると、見えてきたこと
実際に工程ごとに数字を追ってみると、いろいろなことが見えてきます。
耕起作業。10アールの畑を20分で耕していたところを、18分で終えられるようになった。この2分の差が、そのまま利益になります。
堆肥。購入すれば10万円かかるところを、自分でつくれば人件費だけで3万円で済む。同じ品質のものができるなら、この差は7万円の利益です。
種の保管。ネズミに食べられたり、湿気でダメになったり。冷暗所できちんと保管するだけで、防げる損失があります。
育苗トレイ。1000枚仕入れたけれど、実際に使ったのは800枚。残りの200枚は倉庫で眠ったまま。これも、数字にして初めて見える無駄でした。
保冷庫のレンタル料が月3万円、300平米。ここに置いているだけで、1平米あたり100円のコストが発生している。こういう「見えない経費」も、工程ごとに分けて考えると、ちゃんと数字として姿を現します。

「たった一つの質問」がすべての起点だった
こうして工程ごとに数字を追っていくと、農園全体では見えなかった景色が見えてきます。
黒字だと思っていた工程の中に、実は利益を薄くしている作業が混ざっていたり。逆に、地味だと思っていた工程が、実はしっかり稼いでいたり。
結局のところ、お金に困らない経営に共通しているのは、特別な裏技ではなく、「この作業は、単体で採算が取れているか?」という、たった一つの質問を、工程ごとに繰り返せているかどうか、なんだと思います。
数字にして、無駄がないか、損をしていないかを一つずつ確認していく。それを積み重ねていく先に、干ばつが来ても大雨が来ても揺るがない「ダム」ができていくのだと思います。
工程ごとの採算を、実際に自分の農園の数字にあてはめてみたいという方は、農テラスの無料相談で一緒に整理することもできます。農ビジ会では、こうした経営の視点を仲間と共有しながら深めています。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!