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ブログ 2026.09.06

働かない2割は必ず出る。「働きアリの法則」と農業経営の壁

脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
農業コンサルの現場で数字を見ていると、毎回ぶつかる壁があります。

「生産性を数字で見てください」

そう伝えると、ほとんどの経営者がまず戸惑います。工場なら簡単です。ラインが決まっていて、1人がどれだけ作ったかがそのまま数字になる。でも農業はそうはいきません。同じ作業でも、人によって、日によって、成果がバラバラだからです。

この「見えにくさ」こそが、農業経営が数字に弱くなる最大の理由だと、これまで600件以上の相談を通じてわかってきました。

工場なら簡単、農業だと難しい理由

たとえば工場で、1日3万円分の商品を10人で作ったとします。単純に割れば、1人あたりの生産性は3000円。8時間で計算すれば時給換算までできてしまいます。

農業も、実はここまでは同じように計算できます。

問題は、この後です。

パクチー収穫で粗利が消えた話

ある農家さんの例です。ビニールハウスでパクチーを育てていて、300kgの収穫で30万円の売上になる計算でした。

  • 売上:30万円

  • 材料費:10万円

  • 粗利:20万円

ここまでは、悪くない数字です。

ところが、この収穫作業をパートさん5人にお願いしたところ、日当1万円×5人で、なんと4日かかってしまいました。人件費だけで20万円。

粗利20万円 − 収穫の人件費20万円 = 手元に残る利益、ほぼゼロ。

(図解1:パクチー収穫、粗利20万円が消えるまで)

「収穫のためだけに、粗利がまるごと消えていく」

これは特別な失敗談ではありません。原価計算と人件費の掛け算を、農作業の工程ごとに当てはめていくと、似たようなことがどの品目でも起こり得ます。製造原価と人件費の足し算引き算で利益を出すのは、他の業種なら当たり前にやっていることですが、農業ではこの「当てはめ」がまだ弱い現場が多いというのが、コンサルをしながら見えてきたことです。

「働きアリの法則」に気づいた瞬間

数字の壁の先に、もうひとつ面白い法則があります。

これは前の会社の社長から教わった話です。働きアリの集団を観察すると、だいたい2割は働いていないそうです。「働け」と厳しくしても、その中からまた2割が働かなくなる。入れ替えても、また同じ比率に落ち着いていく。

理屈は正直よくわかりません。ただ、この現象は組織にもそのまま当てはまるようだ、というのが、いろいろな農業経営を見てきた中でのひとつの発見です。

組織の規模で、「2割」の重さが変わる

ここが今回いちばん伝えたいところです。

同じ「働かない2割」でも、組織の規模によって受けるダメージがまったく違います。

(図解2:同じ「働かない2割」でも、組織規模で重さが変わる)

自分+奥さん+従業員3人、合わせて5人規模の組織の場合、働かない1人は全体の20%。その人にも毎月25万円前後の給料を払うとすれば、経営に与える影響はかなり直接的です。「この人さえいなければ」という気持ちになるのも、無理はありません。

一方、30人規模になると、同じ1人は全体のわずか3%程度。しかも組織が大きくなれば、警備や総務のような、生産性を強く問われない役割に自然と吸収できる余地も生まれます。

つまり、同じ現象でも、組織の大きさが「壁」の高さを決めているということです。

見えてきたこと

これは今の若い担い手世代に置き換えても、同じ構図が起きています。今なら、パートさんの労務管理をシステムやアプリで見える化する動きに近いかもしれません。ツールは変わっても、「数字で工程を見る」という本質は変わらないように感じます。

小規模の段階でこの壁にぶつかったとき、私自身も、中途半端に足踏みしながら消耗していく怖さを実感したことがあります。組織を大きくすると決めたなら、中途半端な規模で足踏みするより、早く次の規模に進んだほうが、この「2割」の重さが軽くなっていく——そんな流れが、いくつもの経営を見てきた中で見えてきました。


もし今、自分の経営の中で「この数字、どう見ればいいんだろう」と引っかかっている部分があれば、農テラスの無料相談で一緒に整理してみませんか。同じように数字と向き合っている仲間が集まる農ビジ会でも、こうしたテーマをよく話しています。

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