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ブログ 2026.09.22
「相手が決める」 一流農家だけが知っている価格の法則
こんにちは。
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
先日、文房具屋でふと目に入った万年筆に、33万円という値札がついていました。
111本しか作られていない、匠の技の万年筆。品質が2倍良くなったわけでも、書き味が2倍優れているわけでもないはずです。それでもこの価格がつくのはなぜか。答えはシンプルで、欲しい人の数に対して、供給される数が少ないから。それだけのことでした。
同じことが、お米の値段が上がったニュースを見ていても浮かんできました。品種改良の努力があったのは事実です。でも味が急に2倍美味しくなったわけではない。需要に対して供給が足りていないという「情報」が広がった瞬間、価格が動いた。それだけの話なんです。
価格を決めているのは、実は自分ではなかった
【図解1】

長年この仕事をしてきて、あらためて腑に落ちたことがあります。価格を最終的に決めているのは、作る側ではなく、相手(買う側)だということです。
「いいものを作った」という自負は大切です。でも、それを何円で買うかを決める権限は、こちらには一切ありません。買うか買わないかは、いつも客が決めます。
これは農業に限った話ではありません。組織の中で出世できるかどうかも、決めるのは上司です。就職できるかどうかも、決めるのは会社です。すべての場面で、決定権を持っているのは常に相手側。この当たり前のようで見落としがちな構造に、一流と呼ばれる人たちは自覚的なんだと気づかされます。
日本とヨーロッパを行き来して研修を受けていた20代の頃、この違いをはっきり感じたことがありました。フランスやドイツ、オランダでは、農家が丁寧に作ったものには、それに見合う対価を払うという空気がありました。一方の日本は「安かろう良かろう」の期待が強く、給料は上がらないままデフレが進み、農産物の価格だけが叩かれる構造が続いてきました。
米の値段が上がって政府が介入したのも、国民の生活を守るための当然の動きです。国民は安いほうがいい、農家は高く売りたい——このせめぎ合い自体に、こちらが介入できる余地はほとんどありません。相場や市場流通の価格は、需要と供給のバランスという、個人の努力とは別のところで決まっていくものだからです。
自分でハンドリングできる市場には、別のルールがある
【図解2】

一方で、相対取引や自分のブランドで売る場合は話が変わってきます。ここには、こちらの工夫が届く余地があります。
物が売れない理由を考えていくと、実は3つしかないことに気づきます。
ひとつは、知られていないこと。存在を知らない客には、選びようがありません。
ふたつ目は、需要がないこと。珍しいだけの商品は、見た目のインパクトはあっても「欲しい理由」に結びつかないことがあります。
そして3つ目が、信用がないこと。知られていて、需要もあるはずなのに「あの人からは、なんとなく」という理由で選ばれない。これがいちばん厳しいと感じます。
売れない理由の逆をたどっていくと、そこに売れるためのヒントが隠れていることが見えてきます。
熊本で農産物を扱っていて面白いと感じるのは、同じ品目でも売る場所によって価値がまったく変わることです。北海道の名前がつけば九州で驚くほど売れ、逆に沖縄では米そのものに強い需要があります。商品そのものを磨くことと同じくらい、どこで・誰に届けるかという視点が価格を左右しているのだと、日々の相談の中でも実感します。
儲かる差は、偶然ではなく理屈でできている
「今年はたまたま相場が良かった」「天候に恵まれて品質が良かった」——そんな偶然に頼った儲けは、次の年も続く保証がありません。
儲かると儲からないの差は、実はロジックで説明できるものです。価格を決めるのは相手であるという前提に立ち、知られる・需要をつくる・信用を積むという3つの軸で自分の立ち位置を見直してみる。この視点があるかどうかが、長く続けられる経営の分かれ目になっていくのだと、これまでの600件を超える相談を振り返っても感じています。
売れない原因の中に、売れるヒントがすでに隠れている。そう捉え直すところから、次の一歩が見えてくるのではないでしょうか。
こうした価格やマーケティングの視点について、もう少し深く整理してみたい方は、無料相談も承っています。日々の気づきを仲間と共有したい方は、農ビジ会でもお待ちしています。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!