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ブログ 2026.09.23
「規模拡大すれば儲かる」の幻想|中堅農家が直面する規模拡大の壁
こんにちは。
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
農業を長くやっていると、ある時期から必ずと言っていいほど耳に入ってくる言葉がある。
「そろそろ規模拡大、考えてる?」
熊本で農業をやってきた私自身、この空気を何度も浴びてきた。周りが規模を広げていく中で、広げないことがまるで停滞のように見える瞬間が、確かにある。
面積を2倍にしても、売上は2倍にならない
規模拡大の話をするとき、頭の中でつい工場のロジックを使ってしまう。工場を2つにすれば生産量が2倍になる。そのイメージのまま農地を広げると、思わぬズレに直面する。
10haで10の収量が取れていたとして、20haに広げたら20の収量になるかというと、そうはならないことが多い。18かもしれないし、17かもしれない。面積と収量は、素直に比例してくれない。
これは怠けているとかセンスがないという話ではなく、農業という営みの構造そのものが持っている性質だと、現場を見ていて感じている。
【図解1】

「あなたしかいない」の裏側にあるもの
規模拡大の後押しは、意外なところからもやってくる。
近所の先輩農家が体を痛めてリタイアしていく。「山下君、うちの畑もやってくれないか」。そんな相談が、年々増えている実感がある。担い手が減っていく地域ほど、残っている人に仕事が集中しやすい構造になっている。
頼られることはありがたい。同時に、そこには見えにくいリスクも一緒に乗ってくる。
管理できる面積には、その人ごとのキャパシティがある。目が届く範囲を超えて手を広げると、一つひとつの作物への手入れが薄くなり、結果として収量や品質が落ちていく。頼られて広げたはずが、経営そのものを崩す引き金になることがある。
補助金や融資が後押しする場面もあり、「広げて当然」という空気はますます強くなっていく。その空気の中で、自分のキャパシティを一度立ち止まって確認する時間を持てるかどうかが、分かれ目になっている。
農業のすべてを、農業だけでやらなくてもいい
規模拡大を考えるとき、選択肢は「広げる」か「広げない」かの二択だけではない。もう一つ、農業を事業として見たときの視点がある。
投資の世界には「卵は一つのかごに盛るな」という言葉がある。同じ場所に資産を集中させると、そこに何かが起きたときに全部を失ってしまう。
農業事業も同じ発想で見ることができる。手の届く範囲で農業を続けながら、それ以外の事業や活動を組み合わせていく。これは農業から逃げることではなく、経営全体のリスクを分散させる、一つの設計の仕方だと捉えている。
同じところにばかり力を注ぎ続けることが、実は一番のリスクになっている場面を、これまで多くの現場で見てきた。
【図解2】

自分にちょうどいいサイズを探して
災害も政局も、農業を取り巻く条件は数年単位で変わっていく。今のスタイルがこの先何年も同じように通用するかは、誰にも断言できない。
だからこそ、「広げれば儲かる」という一つの物差しだけで判断を急ぐ必要はないのだと、現場を見ながら感じている。自分の手が届く範囲、育てられる人の数、そして農業以外に持てる選択肢。それらを合わせて考えたとき、初めて見えてくる「ちょうどいいサイズ」がある。
規模の大きさよりも、自分の経営にとって無理のない形を探していくこと。そこに、これからの農業の一つのヒントがあると思っている。
農業界を一緒に照らしましょう。
農業経営や規模拡大の判断について、個別に話してみたいことがあれば、無料相談も受け付けています。同じテーマで学び合う農ビジ会というコミュニティもあるので、気になる方はのぞいてみてください。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!