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ブログ 2025.11.13
人手不足の正体と、その解決法
農家の脳を耕す農業講演家の山下弘幸です。農業歴36年、
稼げる農家を全国に。
農業、農村の課題と対策を分かりやすく解説しています。
今回のテーマは「人手不足の正体と、その解決法」

今、あらゆる業界で「人手不足」が問題になっています。
今日の新聞でも、飲食店が人手不足により閉店したという記事が出ていました。
もちろん農業も例外ではありません。しかし、この“人手不足”という言葉は、ひとつの現象に見えて、その内実はまったく違う2つの不足が混在しています。
ひとつは、単純に“現場で動いてくれる人が足りない”という不足。
もうひとつは、“判断し、現場を回せる人が足りない”という不足です。
この2種類が混ざって議論されているため、問題は複雑化し、対策が的外れになりやすいのです。
■あなたはどっち?農業で起きている「2つの人手不足」
農家の現場では、まず「ワーカー不足」があります。
草取り、収穫、選別、運搬といった作業を担う人がいない。
同時に、「任せられる人が育たない」という悩みも深刻です。
判断できる人がいない。自分の代わりに現場を回せる人がいない。
その結果、経営者はいつまでも現場に張り付き、離れられなくなる。
実際、私自身も家業の農業をやっていた頃、
一番つらかったのは「現場を離れられない働き方」でした。
天候の急変やトラブルに備えるため、誰かが必ず畑に残らなければならない。
休める日でも心が休まらない—そんな生活を一生つづけなければいけないのか。
正直なところこういう農業が好きになれませんでした。
もしかしたら今の担い手不足や後継者不足は、まさにこの “離れられない働き方” が大きな原因ではないかと感じています。
とはいえ、多くの農家は人を雇うことに慎重です。
理由は2つあります。
・農業所得が低く、人件費を出す余裕がない
・家族以外を雇うと気を遣い、ストレスが大きい
このような背景もあって、「全部機械化でいく」という極端な方向に進む農家も出ています。しかし、農業本来の姿は、人を育て、チームをつくり、持続可能な形で『経営』することだと私は思っています。
■「ワーカー」と「マネージャー」は別物
人手不足には明確に2つあります。
①判断させない仕事の人手不足(=ワーカー不足)
ワーカーを雇うためには、仕事を“誰でもできるレベル”にまで分解する必要があります。
作業を細かくし、マニュアル化し、写真付き手順書を作る。
「この通りにやればできる」状態をつくる。
これができていないと、教える負担が増え、忙しさは逆に増します。
せっかく仕事を覚えた頃に辞められると、また最初から…という負の連鎖に陥ります。
②判断してほしい仕事の人手不足(=マネージャー不足)
一方で、任せられる人=マネージャー人材を求める場合は、話がまったく別です。
経営者の“分身”をつくるようなものですから、能力も難易度も違います。
現場判断、天候リスクの理解、優先順位の決定、取引先対応…。
経験と知識が欠かせず、簡単には育ちません。
何より、このクラスの人材は、雇う側の“経営者としての姿勢”も試されます。
この2つの違いを整理せず採用すると、必ず失敗します。
■農業には“メイン業務”と“サブ業務”がある
農業の仕事は、実は次のような長い流れで成り立っています。
作付け準備 → 作付け → 生育管理 → 収穫 → 調整 → 出荷 → 納品 → 取引 → 代金回収 → 数字の集計 → 改善
この中の「どの部分の手を求めているのか」「どこを任せたいのか」を明確にしなければ、人手不足は永遠に解決しません。
さらに重要なのは、農業には“メイン業務”と“サブ業務”があるということです。
■メイン業務
収穫、農薬散布、施肥、生育管理など
→ 作業そのもの
■サブ業務
収穫の段取り、人員確保、肥料の準備、どれをどれだけ買うかの判断、保管場所決め、記録、データ整理、改善点の抽出など
→ 段取り・計画・判断・管理すべて
実はメイン業務以上に、サブ業務の方が“脳を使う”のです。
そして多くの農家は、このサブ業務が整理されていないために、
ワーカーにもマネージャーにも任せられず、
すべてを自分で抱え込んでしまっています。
ここが、人手不足の“本質的な詰まり”です。
■では、人手不足の解決法は何か?
雇用の目的を「忙しいから人を雇う」から
「現場を離れるために仕組みをつくる」 に変えることです。
忙しいから人を雇う—
この発想のままだと、仕事は減らず、むしろ増えます。
機械化や高額なシステムを導入しても、借金と負担だけが残る危険もあります。
ではどうするか。
■人手不足解消の本質的な解決法は2つだけです
① 誰でもできるように仕事を分解し、マニュアル化する(ワーカー確保)
② 自分と同じ意思決定ができる人材を、時間をかけて育てる(マネージャー確保)
この二つを同時に進めながら、日々の仕事を再設計していく必要があります。
農家が野菜をつくるだけでは、もう立ち行かない時代になったのです。
私たち農家は今、
「農産物をつくる人」から「農産物を作る人を作る人」へ
変わらなければいけません。
これに気づいた農家だけが、生き残り、これに気づいた産地が持続継続できるのです。
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第64回 令和7年12月5日(金)19:00~
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テーマ:キャベツ日本一連続出荷への挑戦
農ビジ会員さんのお話です。
JA出荷から自分で販路を開拓したノウハウや
キャベツの連続生産体系
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農業実務のヒントが詰まったお話が聞けると思います。
たくさんのご参加お待ちしております。
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