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ブログ 2025.10.01
農業の担い手はなぜこんなにも少なくなっているのか?
農業,農村課題を経験と知恵でサポートする
農業戦略家の山下弘幸です。
さて、今回のテーマは
「農業の担い手はなぜこんなにも少なくなっているのか?」
先日、農業トークディスカッションでファシリテーターを務めさせていただきました。
その際、次テーマが大きな話題となりました。
「担い手問題」
私は担い手不足の理由はシンプルだと考えています。
・農業よりも他の産業の方が魅力的に映ったから
・農業そのものではなく「先代の価値観」を押し付けられるから
これは農業だけでなく、多くの「担い手不足」に悩んでいらっしゃる方に
当てはまるテーマだと思いますので最後までご覧いただけると幸いです。
農業の事業承継のパターン
① 親を見て育つ、ナチュラルな承継
もっとも自然な形は「親の農業を見て育ち、自分もやりたいと思う」ケースです。
親の背中を見て「自分も農業をやるんだ」と感じる。これが理想的でナチュラルな承継の形です。
② 孫が担い手になるケース
一方で、親は農業をやめてサラリーマンに。
しかし祖父母が細々と農地を守り続け、その孫が改めて担い手となるケースが増えています。
祖父母が守り続けた「農地」や「技術」というインフラを再発見し、新しい世代がそこに魅力を見出すパターンです。
③ 承継のアドバンテージ
農業の場合、親や祖父母が持っている基盤は大きなアドバンテージです。
・農地という資産
・農機具という設備
・技術や経験
・地域の信用や繋がり
これらを受け継げることは、新規参入に比べて圧倒的な強みになります。
それでも担い手が減る理由
しかしながら、なぜアドバンテージがあるにも関わらず担い手は減っているのか。
それは「それ以上に魅力的な選択肢」が社会にあるからです。
都市生活やサラリーマンとしての安定。他産業のキャリアパス。
農業が基盤を持っていても、それを上回る魅力に負けているのが現実です。
さらに、あるパネラー(女性経営者)の意見も印象的でした。
結婚しておらず子どももいないため「子に継がせる」という発想自体がない。
しかし事業を継続させるためには、
・会社の売却(M&A)
・従業員による承継
こうした形も「担い手」として考えられる、と。
担い手問題は、必ずしも「親から子へ」だけではなく、もっと広い概念なのです。
私の体験談
最終的に、この担い手問題の結論ですが、
親が農業に魅力を感じているからと言って、子が同じように魅力を感じるわけではありません。今回パネリストの方で特徴的だったのは
親の事業をそのまま引き継ぐというより、親の事業を引き継ぎ自分の経営にカスタマイズしている点です。例えば親はスイカ栽培だったが、継承者はベビーリーフ栽培へ。
つまり、担い手とは今までやってきた「事業の継承者」つまり
「親のコピー」になる人と捉えられがちですが、そうではなくて親がやってきたインフラを生かして“新に事業を始める”人という視点で農業をやっているということなのです。
私自身もかつて親のスイカ農業を継いだとき、「俺は俺のやりたいことがある!」と反発しました。
しかし親は「お前にはできない」と経験不足を理由に認めてくれませんでした。
この体験から学んだのは、“親の価値観の押し付け”が担い手の芽を摘むという現実です。
きっと多くの方も同じように「自分は自分の人生を歩みたい」と心のどこかで思っていたのではないでしょうか。
担い手は多様である
農業の担い手問題は継ぐ側と、継がせる側の両面があります。
継ぐ側は「親から子へのバトンタッチ」「親の言いなり」になるのではなく、
自分のオリジナルを創る農家を目指しましょう。
なぜなら、親の言いなり農家は苦労するからです。
私は、周りから「すごいね、跡を継ぐなんて立派だねと。」周りに褒められ、“立派な後継ぎ”を演じ続けた結果、心が折れてしまう農家を私はたくさん見てきました。
家業を継ぐなら親がやってきたことを引き継ぐことではなく、
先代が守り続けた「農地」や「技術」、「農機具」や「地域信用」というインフラを引き継ぎ、時代に合った農業を改めてスタートさせる。このような思考でやるべきです。
そして、農業を継がせる側は「自分がやってきたこと」を継がせるのではなく、あくまで家業のインフラを引き継がせて農業はオリジナルでよい。というスタンスが良いと思います。
もちろん、○○産地と呼ばれる特定の農産物で成り立っている地域もあるでしょう。
そこでは地域の農家が好き勝手に違うモノを栽培しはじめたらその長年続いた産地はなくなるじゃないか!って心配される方もいらっしゃるでしょう。
でも、そんなことを言っていたら、産地どころか農家自体がいなくなります。
先代がやる農業をそのまま担いたい、産地を残すために頑張りたい。
そういう方はそれでいいのですが、産地と呼ばれていたところの方がむしろ担い手減少が加速している事実にも目を向けなければなりません。
本来、農業はもっと自由であるべきです。農業で自己実現に向けて頑張りたい!
もっと輝きたい!飛躍したい!と願う人も多いはず。
農業界が、担い手へ事業を「継承する」より、次世代へ「自主性を重んじる」に意識をスライドすれば現在の担い手減少に歯止めがかかるはずだと信じています。
農業の承継は「親のコピー」をつくることではありません。
先代のインフラを引き継ぎ、自分らしい農業を始めることです。
多様化の時代に合わせて、担い手の在り方も多様であっていい。
それこそが農業を持続可能にし、次の世代に希望をつなぐ道だと私は信じています。
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