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コラム 2020.06.08
【農業コラム】農家の選択と覚悟
現在私が執筆させていただいております
熊本日日新聞 夕刊 「一筆」に連載中のコラムをお届けします 5月29日付
「農家の選択と覚悟」
農作業が忙しいから人を雇う―。これは根本的に間違っています。
なぜなら農業の人手不足は慢性的なものではなく、一過性が多いからです。
例えば、稲刈りの時期に冬作のキャベツの植え付けが重なるとか、
田植えとトマトの収穫が重なるとか。農業は1年のうち、農作業が暇な農閑期もあるので、
年間雇用するのが難しいのです。
これまで農家や農村では家族、親戚、ご近所の方々に協力してもらうなど、
互いに労力を提供し合ってきました。これを加勢(かせい)といいます。
しかし、時代が変わり、加勢もただというわけにはいきません。
手伝ってもらうと気を使ったり、親戚や近所の付き合いも
相互扶助的な関係が希薄になったりで、繁忙期の人手をどう確保するかが問題になっています。
だからといって常時雇用をすればその分、人件費が生じます。
農業は先行投資型なので、不作や市場価格の下落で収入が減っても
給料を支払わなければなりません。
これから農家は厳しい選択を迫られます。このまま家族経営でいくのか、
外部から人を雇う雇用型経営に転換するのか。いずれにしても大きな覚悟が必要です。
人を雇わない農業には、家族内労力の分散と小規模多反収の技術研磨が不可欠です。
一方、人を雇うには、安定的な売り上げと利益を上げるために、規模拡張と安定した
取引先の確保を目指さなければなりません。このように人を雇うか雇わないかで
全く違う経営になります。隣が人を雇ったからわが家も雇おう―。これは絶対にダメですよ。