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コラム 2020.06.08
【農業コラム】野菜はできるもの
現在私が執筆させていただいております
熊本日日新聞 夕刊 「一筆」に連載中のコラムをお届けします 6月5日付
『野菜は「できる」もの』
最近、子どもを「つくる」という言葉に違和感を覚えます。子どもは「授かる」もので、
つくるというのは違うような気がします。
似たような話で、農家の人は「野菜を作る」とは言わず、「野菜ができる」と言います。
例えば「私が作った野菜は」とは言わず、「うちでできた野菜は」というように。
野菜作りという言葉はワンフレーズで一般的に使われていますが、「野菜を作る」
という言葉はちょっとおこがましく聞こえてしまいます。
私は、施設園芸といってビニールハウスで野菜を育てていた元野菜農家です。
やっていた作業は環境制御。植物が育ちやすい環境を整えてやるのが仕事です。
朝からビニールハウス内の温度が上がりすぎないように換気窓を開け、
夕方の日が沈む前に窓を閉じる。水分が足らなければ水を与え、
栄養が足らないようなら肥料を与えます。
農家は野菜ができる(育つ)ための「環境整え業」なのです。
ベストな環境が整えばベストな野菜が育ち、光、水、土、栄養などに
不具合があれば生産量や品質が下がります。ただ、どれだけ環境を整えようとしても、
自然の力に屈することもしばしば。これまで人間の力の及ばない、
どうしようない事を何度も味わってきました。
だから、農家はモノができたときの喜びと感謝があるのです。
野菜を作ろうとすれば苦しみが増します。
なぜなら人間のチカラだけでは全てをコントロールできないからです。
なんだか子育てと似ていませんか。子どもも親の思い通りにはいきませんから。