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ブログ 2026.10.21
「家業があっていいな」は間違いだった
後継者だけが知っている”仕組みの壁”
こんにちは。農業経営戦略家の山下弘幸です。
今回は、これから農業を始める人、
そして家業を継ぐ人に知ってほしい
「仕組み」の話です。
経営とは何か。
この問いには、
いくつもの答えがあります。
経営は、利益の追求だ。
経営は、数字だ。
経営は、理念だ。
どれも間違いではありません。
今回は、少し違う角度から
考えてみます。
経営は、仕組みづくりだ。
■「よし、仕組みを作ろう」から始める人はいない
農業を始めるとき、
「よし、仕組みを作ろう」
と考える人は、ほとんどいません。
おいしいものを作りたい。
いいものを届けたい。
多くの人は、
そんな思いからスタートします。
ただ、農業を続けていくうちに
見えてきたことがあります。
それは
「お金が入ってくる仕組み」
の存在です。
■ 会社は「仕組みの完成品」
世の中には、すでに
お金が入ってくる仕組みが
出来上がっている場所があります。
会社です。
会社は、商品やサービスを提供して
お金を得る仕組みを持っています。
入社すれば、給料が出る。
休みがもらえる。
これも仕組みの一部です。
ところが、会社を辞めた瞬間、
その仕組みは手元からなくなります。
では、そこからどうやって
暮らしを立てるのか。
答えは「起業」です。
起業とは、
お金が入ってくる仕組みをつくること。
そして、その中から
自分の給料を出せる仕組みをつくること。
脱サラして農業を始めるのは、
まさにこの「起業」にあたります。
仕組みの中で働いてきた人が、
いきなりゼロから仕組みをつくる。
これは、相当な難題です。
辞める前にそれを知っていた人は、
覚悟と蓄えを用意しています。
仕組みが回り出すまでには、
時間がかかるからです。
【図解1】お金が入ってくる「仕組み」3つのスタート地点

■「いいなー、山下は家業があって」
農業では、親や祖父母から
家業を引き継ぐケースが多くあります。
つまり、出来上がった仕組みを
そのまま受け取れる。
はたから見れば、
うらやましい話です。
私も、サラリーマン家庭の友達から
よく言われました。
「いいなー、山下は家業があって」
でも、私はそれが嫌でした。
その仕組みは、
親や先代がつくったもの。
私がやりたいことでは
なかったからです。
そこで私は、
出来上がっていた仕組みを一度壊し、
1からつくり直しました。
今振り返ると、無謀でした。
素直に引き継いでいれば、
あれほどの苦労は
しなかったはずです。
■ 事業承継は「コックピットの交代」
事業承継は、よく
飛行機の操縦にたとえられます。
フライト中、
機長である親が、
隣の副操縦士である息子に
そっと操縦桿を譲る。
息子は隣でずっと見てきたので、
同じように操縦すればいい。
やがて機長は席を離れ、
息子が機長として空を飛ぶ。
ところが、ここで問題が起きます。
親が経験したことのない事態が、
やってくるのです。
そのとき、息子は戸惑います。
離陸したあとに
操縦桿を渡されただけで、
離陸も、着陸も、
経験していないからです。
これが、親から子へ渡される
よくある事業承継の姿です。
【図解2】事業承継は「コックピットの交代」

■ 自分の空を飛びたかった
私は、親が飛んでいる空を
飛ぶのが嫌でした。
自分が飛びたい空を、飛びたかった。
だから一度、飛行機を着陸させ、
まったく違う滑走路から
飛び立とうとしました。
当然、親は心配します。
自分が飛んだことのない空だからです。
こうして、親子はぶつかります。
それでも、後継者は飛ぶ。
何度も離陸に失敗し、
何度も着陸に失敗し、
翼を折り、ケガをしながら。
■ 27歳で始めた変革は、32歳で詰んだ
私の場合、27歳から
一気に変えようとしました。
農協出荷をやめる。
人を雇い始める。
栽培品目を変える。
販売のやり方。
経営のスタイル。
つくるもの。
仕組みを支えていた柱を、
3本同時に抜いたようなものです。
親とはもめる。
お金はなくなる。
お金がないから、
妻とはケンカになる。
家の空気が悪くなると、
子どもも泣く。
あれもこれもと手を広げすぎて、
すべてが回らなくなりました。
27歳で始めた変革は、
32歳で、完全に詰みました。
今振り返ると、
見えてきたことがあります。
仕組みを変えるときは、
柱を1本ずつ差し替えていく。
全部を一度に抜くと、
家ごと傾いてしまう。
当時の私には、
それが見えていませんでした。
■ 真っ白なキャンバスがうらやましかった
事業承継という名のもとで
親から仕組みを受け取っても、
結局はつくり直すことになる。
多くの若手農家が、
同じ道をたどっています。
そして、このときに一番やっかいなのが、
経験者である「親」の存在です。
私は何度も、
非農家から新しく農業を始める人を
うらやましく思いました。
真っ白なキャンバスに、
思い通りの絵が描けるからです。
後継者は違います。
親が描いたキャンバスを、
一度白く塗り直すところから始まる。
これは、想像を超える戦いです。
親がこれまでやってきたことを
否定することになるからです。
しかも、新しく描く絵に
誰も共感してくれないかもしれない。
その不安が、ずっとつきまといます。
前例のないことには手を出さない。
これまで通りが一番。
地域にも、家の中にも、
そんな空気があります。
でも、時代は動き続けています。
今まで通りのままでは
いられない場面が、
いつか必ずやってくる。
この葛藤は、今も多くの若手農家が
抱えている悩みです。
■ 仕組みができるまで、10年
農業は、仕組みをつくらないと苦労する。
逆に、仕組みができあがれば、
これほど面白い仕事はない。
長く農業に関わってきて、
心からそう感じています。
ただ、どのスタート地点にも
それぞれの壁があります。
ゼロからつくれば、時間がかかる。
引き継げば、自分らしさが出しにくい。
塗り替えるなら、2倍の労力がいる。
どの道にも、近道はありませんでした。
私自身、「よし」と覚悟を決めてから
仕組みができるまでに
10年かかりました。
これから農業を始める方。
家業を継ぐかどうか迷っている方。
最初から「10年かかるもの」と
見ておくだけで、
途中の失敗の受け止め方は
ずいぶん変わってきます。
農業は素晴らしい。
そして、面白い。
でも、思っているほど
簡単ではない。
だからこそ、覚悟を持って飛び立つ人が、
これからの日本の農業を
支えていくのだと思います。
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立ち止まっている方へ。
農テラスでは、
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一人で抱え込まず、
まずは話してみるところから
始めてみませんか。
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農業界を明るく照らす農テラス。
今日も一緒に、こちらの脳を耕しましょう。