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ブログ 2026.10.23
国が補助金を出す条件
「備えあれば憂いなし」 「転ばぬ先の杖」
昔から言われている言葉ですが、 農業をやっていると、 この言葉の意味が 毎年少しずつ重くなっていきます。
今日は、 リスクマネジメントとBCP (事業継続計画)の話をします。
各地で災害が多発しています。熊本地震、千葉豪雨、そして台風など災害が発生又は切迫していることを示す警戒レベル5が頻発される異常事態が続いています。
「まさか」は、だいたい忙しい時に来る
私の畑は熊本空港のそばにあります。 標高はだいたい160メートル。 平地というより、 ゆるい山の上のような場所です。
川は、畑より低いところを流れています。
ある年、 1回だけ渇水になりました。
自宅のそばの川から ポンプで水をくみ上げて、 タンクに積んで、 山を登って畑まで運んで、 エンジンをかけて水をまく。
本来やらなくていい仕事が、 毎日ひとつ増えました。
台風にも、何度も痛い目に遭いました。 台風は、もうキリがありません。
私が現場を離れてからも、 東北の震災、 阿蘇の噴火、 熊本地震、 そしてコロナ。
コロナを予想していた人は、 たぶん誰もいなかったと思います。
こうやって並べてみると、 「まさか」は 数年に一度ではなく、 ほぼ毎年、形を変えて来ています。
「起きる前」と「起きた後」は、別の話
リスク管理と聞くと、 ひとまとめに考えがちですが、 実は時間軸で2つに分かれます。

起きる前にやるのが、 いわゆるリスクマネジメント。 予防する、被害を減らす、という発想です。
起きた後にどう動くか、 これがBCP(事業継続計画)です。
「起きないようにする」と 「起きても回す」。
この2つがそろって、 はじめて一枚の計画になります。
私自身、 若い頃は前半の「予防」ばかり 考えていました。
台風対策、防除、排水。 それは大事です。
でも、 熊本地震のときに思い知ったのは、 後半の 「起きた後どうするか」のほうでした。
熊本地震、4月の畑で起きたこと
10年前の熊本地震は4月でした。
4月というのは、 芋を植えなきゃいけない、 スイカも収穫しなきゃいけない、 という一年で一番忙しい時期です。
畑は動いていました。 作物も取れていました。
でも、物流が動かない。
取れたものを運べない。 運べなければ、そのまま腐る。 取引先にも迷惑がかかる。
自分の畑は無事でも、 道が止まった瞬間に 商売が止まりました。
そういえば2週間ほど前も、 千歳空港・札幌のほうで 大雪で物流が止まっていましたね。
これは熊本だけの話ではなく、 日本中どこでも起きることです。
「明日お届けします」の裏側
農産物を熊本から 東京、名古屋、大阪へ送るとき、 まずは陸送です。
大阪の取引先に 「明日お届けします」と言ったら、 だいたい今日の夕方には 出発していないと間に合いません。
今日の夕方に出て、 明日の夕方に届く。
この前提が、 高速道路が封鎖された瞬間に 崩れます。

ここからが、 現場を経験した人ほど うなずいてくれるところです。
お店側は「来る」と思っています。 来なければ、 それは欠品です。
こちらのせいではありません。 道路が止まったのは天災です。
でも、 スーパーのセンターや店舗に 農産物が届かなければ、 お金は払ってもらえません。
「山下さん、送ってくれたんでしょ? 広島あたりで車が立ち往生して 仕方ないですね」
そう言ってもらえたとしても、 届いていないものに お金は払えないのです。
届かなければ、 売上はゼロ。
これが農業ビジネスの シンプルで厳しい現実です。
じゃあ、その時どうする?
「もしも」のとき、 別のルートを通るのか。 空輸なのか。 船なのか。 鉄道コンテナなのか。
「うちには、 いつもの道が使えないときの 二本目の線がありますか?」
この問いに答えを持っておく。 それがBCPという考え方です。
大がかりなものである必要はありません。
・別の運送会社の連絡先を一つ持っておく ・「届かなかった場合」の連絡を、取引先と事前に決めておく ・保存がきく形(加工、冷蔵)に逃がせる作物を一つ持っておく
こういう小さな「二本目」の積み重ねが、 起きた後の動きを変えます。
30年前はなかった「ワンセット」
ここは、これからの流れとして 知っておくといいところです。
補助金の申請、 事業計画、 金融機関への融資の申し込み。
こういう場面で、 BCPの提出が求められる時代になっています。 すでに求められている場面も 多いと思います。
「お金を出しますよ、頑張ってくださいね」
ここまでは以前と同じです。
そのあとに、
「万が一のときの対策は、 もちろん取っていらっしゃいますよね?」
ここまでが、 ワンセットになりました。
30年前、 こういう考え方は あまり言われていませんでした。 あったのかもしれませんが、 少なくとも現場では聞きませんでした。
今は違います。 国も含めて、 世の中の仕組みそのものが 「災害ありき」で動いています。
災害、気象変動が 「起きるかもしれない」ではなく 「起きる前提」で 物事が組み立てられています。
まとめ:問いをひとつ持って帰る
長くなりましたが、 今日の話を一つに絞るなら、 これです。
「いつもの道が止まったとき、 うちは何で届けるか?」
答えが今なくても大丈夫です。 問いを持っているかどうかで、 起きた後の動きが変わります。
私は渇水で山を登り、 台風で何度も泣き、 地震で物流に止められて、 ようやくこの問いにたどり着きました。
今回は災害などのトラブルが発生してもビジネスがとまらないように対策するという視点でお話をしました。
一方で生鮮野菜は物流やビジネスにおいて大きなリスクがあるということを認識しましょう。別の対策として、日持する、ストック(備蓄)出来る商品を持つというのも今後の農業の大きなキーワードになります。
この話はまた別の機会に。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!