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ブログ 2026.10.19
農家を悩ませる「5つの壁」
農業をしていると、 ときどき理由のわからない 重さを感じることはありませんか。
一生懸命やっているのに、 なぜか楽にならない。 がんばっても、どこかで 押し返されるような感覚。
私自身、長く農業を続けるなかで その重さの正体を ずっと考えてきました。
そして整理してみると、 農業には大きく 「5つの壁」があることが 見えてきました。
今日はその話を 一緒に眺めてみたいと思います。
農業をとりまく5つの壁
① 営農の壁 ② 政治の壁 ③ 経営の壁 ④ 心の壁 ⑤ 家族の壁
ひとつずつ見ていきます。
① 営農の壁
栽培管理や飼育管理。 私たち農家は、ここに ほとんどのリソースを注ぎます。
どれだけ収量をとるか。 どれだけ品質を高めるか。 ここに向き合うからこそ 「生産者」と呼ばれるのだと思います。
ただ、天候や環境は選べません。 資材の価格も、燃料費も、 自分の意思では決められません。
人の力だけでは続かないので、 環境制御や省力化の設備も必要になる。 けれど、それもまたコストです。
そして、そのコストを 売り値に上乗せすることは なかなかできないのが現実です。
② 政治の壁
農業は、政治と 切っても切れない関係にあります。
市役所や町役場には農政課があり、 農協の組合員さんは 地道に農政活動を続けています。
農業は不確定な要素が多いので、 いざという時には 国の支えが欠かせません。
一方で、国が民間の事業に 深く入り込みすぎるのも 望ましいことではない。
このあたりの線引きは 今もあいまいなままです。 お米の価格が、減反などで 調整されてきた歴史もあります。
だからこそ農家は、 政治を無視することができない。 これも一つの壁だと感じています。
③ 経営の壁
これは、おカネの流れの話です。
経営の基本はとてもシンプルで、 出ていくお金より 入ってくるお金が多ければ、 手元にお金が残ります。
そのお金で、また次の 種や肥料を買うことができる。 これが、続けられる農業の土台です。
ところが農業では、 その逆がよく起こります。
病害虫や災害、天候不順で 収量が落ちる年があります。 反対に豊作で 価格が崩れる年もあります。
どちらも、収入が減って 利益が残らない状態です。
そこで私が大事にしてきたのが 「ダム式経営」という考え方です。
【図解2:ダム式経営のイメージ】

余裕のある年に利益をためておき、 足りない年にそれを放流する。
自分の経営の中に 小さなダムをつくっておく というイメージです。
言葉にすると簡単ですが、 これを仕組みとして続けるのは なかなか難しい。 私自身も何度も苦労してきました。
④ 心の壁
心は、どうしても 感情に左右されます。
いいことがあれば喜び、 嫌なことがあれば落ち込む。 誰でも同じだと思います。
農村は人の入れ替わりが少なく、 その分、つながりが深いという 良さがあります。
ただその一方で、 変化を受け入れにくい空気も 生まれやすいように感じます。
気づけば、自分の気持ちより 「周りにどう見られるか」を 優先してしまっている。
狭いコミュニティの中で 人と比べ続けることは、 思っている以上に 心をすり減らします。
この感情とのつきあい方が、 4つ目の壁です。
⑤ 家族の壁
農業は、もともと 家業として成り立ってきました。
親も子も孫も、 みんなが大事な働き手。 家長を中心に、家族で 支え合って暮らしてきました。
我が家も同じです。 父は農業で家族7人を養い、 私も農業で家族6人を養ってきました。
今でいえば、 家族だけで小さな会社を回し、 その売上で全員の生活を まかなっているようなものです。
支え合いは心強い反面、 すべてを家業に頼る形は とても重たいものでもあります。
5つを並べて、見えてきたこと
こうして5つの壁を並べてみて、 私があらためて感じたのは、
自分でコントロールできる領域は、 思っていたよりずっと少ない
ということでした。
【図解1:農業をとりまく5つの壁】

私がこのことに気づいたのは 30代の頃です。
それからは、 自分で動かせるところに力を注ぎ、 動かせないところには 力を入れ過ぎないように 心がけてきました。
動かせるのは「経営」と「心」
経営は、一度身につけると どの業界でも通用します。 基本の型があり、 答えを見つけやすい分野です。
心も同じで、 整え方ややり方があります。 自分次第で、少しずつ 変えていくことができます。
動かしにくいのは「営農」「政治」「家族」
営農は本当に難しいものです。 熊本でうまくいった方法が、 隣の宮崎では通じないこともある。 土も気候も違うからです。
だから私は、栽培の指導は していません。
政治も、投票という形で 参加はしていますが、 複雑になった農政を 一人で動かすのは難しい。
そして家族。 親も子も、自分では選べません。 選べるのはパートナーだけ。
そのパートナーでさえ、 一人ひとり別の人格を持っています。 思いどおりにならないのは お互いさまです。
だから、自分の考え方から
他人は変えられない。 家族も、一人ひとり違う人です。
そう考えたとき、私にとって 唯一残った道は 「自分の心と考え方を変えること」 でした。
身もふたもない話に 聞こえるかもしれません。
でも、これを知らないまま どうにもならないことに 人生の大半を注いでしまうのは、 もったいないと感じています。
農業も、農家も、もっと自由でいい
世間では、農業は 「自由でゆったりした、豊かな仕事」 と思われることもあります。
けれど実際には、 表には出にくい悩みを それぞれが抱えています。
これは、誰かが悪いという話では まったくありません。
私なりに農業を少し高いところから 眺めてみて、 「こういうことなんじゃないかな」 と感じたことをまとめてみました。
どの壁が一番重いかは、 人によって違うと思います。 もしよければ、ご自身の場合は どれが当てはまるか、 考えてみてください。
農業はもっと自由でいい。 農家も、もっと自由でいい。
それぞれが感じたままに、 農業を楽しんでいけたら うれしいです。
経営のこと、心のこと、 一人で抱えずに話してみたい方は、 お気軽に声をかけてください。
農業界を明るく照らす農テラス。 今日も一緒に、こちらの脳を耕しましょう。