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ブログ 2026.09.15
大規模農業とスモール農業、生き残り方がまるで違うと気づいた話
こんにちは。
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
先日、あるセミナーで「令和の農業経営で成功する方法」というテーマで話す機会がありました。
タイトルを考えるのに3日かかりました。それくらい、今回伝えたい内容には自信がありました。
話しながら、あらためて自分の中で整理できたことがあります。大規模農業とスモール農業は、生き残り方がまるで違うということです。
同じ「農業」という言葉でくくられているのに、やるべきことがここまで違うとは、37年やってきた自分でも、こうして言語化してみて初めてはっきり見えてきました。
農業の世界は、もう「農家 vs 農家」ではなくなっている
30年前、私が農業高校を卒業した平成元年、農産物の9兆円という市場は、ほぼ農家だけで分け合っていました。農家による、農家のための9兆円でした。
ところが今は違います。
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農業人口は1950年の1500万人から、今は168万人まで減った
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そのうち68%が65歳以上。64歳以下は53万人しかいない
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一方で輸入は6.6兆円。国内で流通する農産物の4割は海外産
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農地法の改正でリース方式なら誰でも参入できるようになった
つまり、9兆円という同じパイを、既存の農家・農業法人・新規参入者・輸入業者が奪い合う時代になっているんです。これが分かってくると、「忙しいから人を雇う」「畑が余っているから規模を広げる」といった昔ながらの感覚だけでは、判断を誤りやすくなっていることにも気づきます。
農業所得を見ても、全体平均だと191万円ですが、主要経営体(頑張っている農家)に絞ると668万円になります。この差の大きさに、農業はすでに格差が広がっている業界なんだと実感させられます

大規模農業が生き残る道
大規模化を選ぶなら、避けて通れないことがあります。
まず大量生産・安定供給。パイが拡張し続けるマーケット(卸・仲卸・業務用・外食)を取りに行く以上、量と安定感が武器になります。
次にお客様との信用取引。これは「定時・定量・定価・定着」という4つの約束を守り続けることです。取引先は「来年もこの量が入ってくる」という前提で、自分たちの商売を組み立てています。だからこそ、家族経営のまま「今年はできたけど来年はできないかも」という状態だと、契約という土俵に乗りにくくなります。
そして雇用と外部資本。従業員を雇うと、儲かっていない年でも給料は待ってもらえません。自己資金だけでは限界が来て、金融機関からの資金調達が必要になります。そのときに「山下農園です」では話を聞いてもらいにくく、法人化して財務資料を出せる体制が求められます。
大規模化とは、「畑を広げる」ことではなく、経営そのものを別の次元に持っていくことなんだと、あらためて感じています。
スモール農業という、もう一つの道
一方で、「大規模はちょっと自分には合わないかもしれない」という方も多くいます。実際、これが一番多いタイプだと思います。
このスモール農業には、大きく2つの生き方があると考えています。
1つ目は、大規模と組む生き方です。
パイの奪い合いは、じゃんじゃんバリバリやりたい人たちに任せて、自分は勝てそうなチームに入る。農協でも卸市場でも大規模法人でも構いません。その代わり、組んだ相手のルールにはしっかり合わせる。これも立派な生き残り方です。
2つ目は、既存のマーケットとは違う場所で勝負する生き方です。

これは、ある豆腐屋さんの話をするとイメージしやすいかもしれません。その豆腐屋さんは、こだわりの大豆で毎日300丁の豆腐を作り、1丁200円で売っています。1日の売上は6万円。月商150万円、年商にすると1800万円になります。
驚くのはここからです。300丁が、毎日、ほぼ売れ残らず売れていく。なぜかというと、「あなたのお店の豆腐じゃなきゃだめ」というファンが1000人ほどいて、その人たちが入れ替わり立ち替わり買いに来てくれるからです。
スーパーができようが、他に何ができようが関係ありません。自分だけの池に、自分だけの魚がいる状態を作れているからです。
これができれば、既存の大きなマーケットでの奪い合いとは、まったく別の土俵で生きていけます。ターゲットを絞り込み、そのターゲットが欲しくなる自分だけの売りを探し、見込み客を集めてリスト化していく。今はインターネットやSNSがあるからこそ、個人がこの生き方を選べる時代になったんだと思います。
規模が小さいなら、まず「守り」を固める
面積10アールなら10アール分、鶏100羽なら100羽分の所得しかない。これは小規模農業の避けられない現実です。
だからこそ、売上を伸ばす前に、経費を見直す努力が効いてきます。私自身、黒マルチを裏表・裏表と3年使い続けていました。1本2,400円のマルチを10本節約すれば、それだけで24,000円が残ります。ナス1ケースの利益が200円だったことを考えると、この差は決して小さくありません。
売上から経費を引いた残りが利益。当たり前のことですが、原価を洗い出し、損益分岐点を把握するところから、経営は変わっていきます。そして、経営が軌道に乗るまでは、農業以外の収入で補いながら進めるという選択肢があってもいい。農業所得には、自分の面積や規模というキャパシティの限界があるからです。
まとめ ― どちらを選ぶかより、まず違いを知ること
大規模農業とスモール農業は、目指すべきものも、日々やるべきことも、ほとんど重なりません。
隣の農家と同じことをやっていれば安心、という時代はもう終わっているように感じます。だからこそ、自分がどちらの方向を目指すのか、まず現在地を知ることが最初の一歩になるはずです。
37年間、いろんな壁にぶつかりながら農業をやってきました。今こうして、大規模とスモールという2つの生き方を整理できたのも、そのときどきの経験があったからだと思っています。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!