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ブログ 2026.09.28
省力化という言葉に踊らされた、私の最大の失敗
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
スマート農業という言葉を聞くと、なんだか自分の農業がぐっと楽になりそうな気がしてくる。
私自身、そう思って動いたことがある。そして、その時の判断が、今振り返ると自分の経営を何年も苦しめることになった。
今日はその話をしたい。
「省力化資金」という言葉に飛びついた
パイプハウスで露地野菜を作っていた頃、台風のたびに被害を受けるのに疲れて、大型ハウスへの切り替えを決めた時期があった。
資金を借りようと調べていくと、「省力化資金」という補助制度に行き当たった。天井の開閉を自動化するとか、温度管理をシステム化するとか、そういう設備を入れると補助金が出る、という仕組みだった。
正直、自分で開け閉めすればいいだけの話だった。それでも、補助金を使うにはその設備を導入することが条件になっていて、気づけば「省力化」という言葉に沿う形でしか、資金を借りられない流れになっていた。
2000万円が、気づけば5000万円になっていた
本来2000万円ほどで済むはずだった投資が、省力化のための設備を組み込んだ結果、4000万〜5000万円まで膨らんだ。

確かに作業は多少楽になった。だが、その分だけ支払いは重くなり、経営はかえって苦しくなった。「省力化」という言葉が、結果として自分の首を絞める形になったわけだ。
同じことが、これから多くの現場で起きていくのだろうと感じている。「スマート農業に関する設備ならこの制度が使えます」「この機械を入れた方がいいですよ」という話は、これからもっと増えていく。
スマート農業は、「農家」を助けるのか
ここで一つ、整理しておきたいことがある。
スマート農業が農家を助けてくれる、と考えると話がずれてくる。実際にわかってきたのは、スマート農業が助けているのは「農家」ではなく「農業」だという点だ。
農業には、人類が生きていく上で欠かせない食を生み出し続けるという役割がある。その役割を果たす上で、ずっと立ちはだかってきた課題が3つある。天候、地力、そして人の力だ。

天候は毎年変わる。土の力も地域によって違う。携わる人の力量にもばらつきがある。この3つをどうコントロールするかというテーマに、農業はずっと向き合い続けてきた。
ハウス栽培で天候の影響を減らし、土づくりで地力を安定させ、技術指導で人の力を底上げする。それが、これまでの農業界の取り組みだった。
スマート農業は、この延長線上にある。センサーで記録し、データを集め、分析し、判断し、実行する。この一連の流れを、人の頭ではなくAIとロボットに任せていこうという動きが、今まさに進んでいる。
今なら、何に近い話か
昔でいう「省力化資金」の話は、今でいえば補助金がついたスマート農業機器の導入と、構造としてはよく似ている。言葉が新しくなっただけで、判断の難しさは変わっていない。
情報が集まるほどAIは正確に判断できるようになる。だからこそセンサーが増え、データ化が進む。悪いことではない。ただ、それが何のための投資なのかを見失うと、当時の私と同じことが起きる。
気づいたこと
スマート農業という言葉だけで安心して、なんとなく便利そうだからとお金を投じても、それが自分の経営の役に立つとは限らない。
大規模にやっている経営体では、すでにこの流れが当たり前になっている。だが、日本の現場には規模の異なる農業者がたくさんいる。スマート農業という言葉に振り回されず、自分の経営に本当に必要なものは何かを、一つひとつ見極めていく必要があると感じている。
時代がその方向に進んでいくこと自体は止められない。だからこそ、その流れの中で何を取り入れ、何を取り入れないかを、冷静に考える視点を持っておきたい。
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