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ブログ 2026.11.04
200本のトウモロコシが、一晩で3本に。農家の私が、稼ぐために「栽培100%」をやめた本当の理由
雨が続いて、出荷予定が2週間ずれた。
市場に出したら、去年より値段が安かった。
就農して最初の数年で、多くの人が出会う場面です。
■ 収穫前夜の畑で
私は1989年に、3代目として親元で就農しました。
就農3年目のことです。
「スイカのあとにトウモロコシを植えると、畑の回し方(輪作)としていいらしい」と聞いて、試しに200本ほど植えてみました。
順調に育って、「明日いよいよ収穫だ」という前の晩。
鹿に、ほぼ全部食べられました。
翌朝、畑に残っていたのは、たった3本。
しばらく声が出ませんでした。
スイカがカラスにつつかれて、売り物にならなかったこともあります。
天候で生育が早まったり、遅れたり。病害虫にやられたり。
こうした損害は、一度や二度ではありませんでした。
■ 「いいものを作れば報われる」と信じていた15年
それでも当時の私は、こう信じていました。
いいものを追求すれば、きっと報われる、と。
だから朝から晩まで畑にいて、時間もお金も体力も、ほぼ全部を栽培に注ぎ続けました。
気づけば、15年が経っていました。
35歳のとき、ようやく気づきます。
天気も、市場の値段も、作物の育ち方も、鹿もカラスも。
私がどれだけ頑張っても、決められないものばかりだ、と。
そこで、栽培に100%を注ぐのを、やめました。
手を抜いたわけではありません。
決められないことに使っていた力を、決められることへ移したのです。
正直に言うと、その後のほうが経営はずっと良くなりました。

■ 決められること、それが「経営」でした
では、自分で決められることは何か。
私の場合、それは数字でした。
いつ植えて、いつ何が起きたか。
いくらかかって、いくらで売れたか。
記録を続けると、傾向が見えてきます。
傾向が見えると、リスクがどれくらいの割合で起きるかがわかります。
そうすると、「損が一番小さく収まる判断」を選べるようになりました。
天気そのものは変えられません。
でも、天気に振り回される度合いは、数字で小さくできる。
これが、私なりに見つけた「コントロールできる領域」の正体です。
■ お客さんの「選び方」も、ある程度は準備できる
コンサルとして600件以上の相談を受けてきた中で、よく見る流れがあります。
栽培や品質には人一倍こだわっている。
でも、売り方や値付けは「そのとき次第」。
結果として、天気と相場に毎年振り回されてしまう。
私自身も、15年間同じところで足踏みしていました。
お客さんの気持ちは、こちらで決められません。
ただ、「選ぶ場面」をどう用意するかは、自分で決められます。
たとえば、商品を3つの価格帯に分けて並べる「松竹梅」。
人は、真ん中を選びやすいと言われています。

ほかにも、一度買ってくれた人とつながり続ける「リスト」を持っておく方法があります。
今でいえば、LINEの友だち登録やメルマガに近いものです。
どちらもマーケティングの世界ではごく普通に使われている考え方です。
私自身、35歳を過ぎるまで、こうした考え方があることすら知りませんでした。
■ 農業に限った話ではないのかもしれません
お店を開いた人なら、お客さんが今日来るかどうかは決められません。
会社を辞めて独立した人なら、景気や取引先の都合も決められません。
これは農業に限らず、自分で何かを始めた人なら、一度は通る道なのかもしれません。
■ 見抜く知恵と、手放す勇気
振り返ると、私に必要だったのは2つでした。
自分で決められることを見抜く知恵。
決められないことに、力を注ぎすぎない勇気。
この2つを持てるようになってから、時間もお金も、本当にやりたかったことに回せるようになってきました。
200本のうち3本しか残らなかった、あの朝のトウモロコシ畑。
今思えば、ずいぶん大事なことを教えてくれた場所だったとわかってきました。
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