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ブログ 2026.09.11
年商900万円は皮算用から始まる、ひとり農業の走り方
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
先日、若手の野菜農家の方からこんな質問をいただきました。
「ひとり農業で稼ぐには、多品目でいくべきですか? それとも一品目に絞って規模を拡大すべきですか?」
親御さんと米づくりをしながら、ハウス5棟でキュウリを中心に、小松菜やほうれん草も育てる計画。売り先は道の駅から少しずつ広げたい――そんな状況での相談でした。
ざっくりした質問に見えて、これがなかなか奥が深い。今回はこの質問を入口に、ひとり農業で数字を作っていく考え方を整理してみます。
稼ぐ農業の定石は「一品目拡大」
まず結論から言うと、単純に「稼げるかどうか」だけで見れば、答えは一品目拡大です。
理由はシンプルで、経費の構造にあります。品目が増えるほど、播種の時期も収穫の機械も違ってくる。それぞれに経費がかかる。逆に一品目に絞れば、その分コストを抑えられる。ここは農業に限らず、どんな商売でも同じ理屈が働く場面だと感じています。
だから「規模を拡大して稼ぐ農業法人」を目指すなら、一品目拡大が王道になる。
でも、ひとり農業だと話が変わってくる
ただし、これはあくまで「組織で規模拡大する場合」の話です。
ひとり農業で一品目を拡大しようとすると、今度は販売のリスクが顔を出します。たとえばキャベツを大量に作れたとしても、それを売りさばく交渉や営業まで、ひとりで回すのは現実的に難しい。一方で、50haを超える規模の農業法人と同じ土俵で勝負することになる。
規模が小さいほど、実は販売の自由度は上がる。逆に規模を追いかけようとすると、卸先が決まらない限り身動きが取れなくなる。ここがひとり農業の分かれ道だとわかってきました。
だからひとり農業で考えるなら、品目の数よりも「直接販売」に軸足を置くほうが理にかなっている、というのが今回の答えです。
皮算用してみる
「直接販売がいい」と言われても、ピンとこない方も多いと思います。ここで実際に電卓を弾いてみましょう。

3,000円の商品を、3,000人が買ってくれたとします。売上は900万円。粗利率を50%とすると、手取りは450万円になります。
「3,000円の商品なんてうちにはない」「3,000人なんて非現実的」――そう感じた方もいるかもしれません。ただ、野菜ボックスや果物のギフトセットで3,000円、5,000円という価格帯は、すでに市場に存在しています。「作れない」ではなく「どう作るか」に意識を向けると、見え方が変わってきます。
3,000人ではなく、250人でいい
もうひとつ、数字の見え方を変えるポイントがあります。

3,000人に一度ずつ買ってもらうのと、250人に毎月買ってもらうのとでは、延べ人数はどちらも同じ3,000人。でも必要になる行動はまったく違います。
新規のお客様を追いかけ続けるのではなく、250人という手の届く規模のお客様と、じっくり関係を築いていく。この視点に切り替えると、数字への向き合い方が変わってくるように思います。
私自身、以前スイカからナス、ほうれん草へと作物を変えながら経営を立て直した時期がありました。あのとき支えになったのは、新しいお客様を次々に開拓することではなく、目の前の限られたお客様との関係を積み重ねることだったと、今振り返ってわかります。今で言えば、SNSやオンライン販売で常連客を育てる感覚に近いのかもしれません。
数字の先にあるもの
売上や手取りの計算は、経営を続けるうえで欠かせません。同時に、250人のご家庭の食卓に自分が作った野菜が並ぶ、という景色も見えてきます。
自分の生活のための農業であると同時に、誰かの役に立つ農業でもある。この両方があってはじめて、経営は長く続いていくのだと感じています。
ひとり農業で多品目か一品目拡大かに迷ったら、まずは直販という選択肢と、皮算用という考え方を試してみてください。
農テラスでは、こうした農業経営の考え方について、無料相談を行っています。今回のようなご相談も歓迎です。ご興味があれば、農ビジ会の情報とあわせてお気軽にお問い合わせください。
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