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ブログ 2026.09.03

儲かる農家が5年前からやっていた、「皮算用」という習慣

脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。

5年前、私が主催する勉強会で若手の農業者さんたちを前に話をしたことがあります。

テーマは「従業員を雇う」こと。人手が足りないから雇う、でもそのぶん給料という固定費が増える。農業は年がら年中同じ売上があるわけではないのに、給料は安定して払い続けなければいけない。

「これ、本当に成り立つんだろうか」

参加者の顔にそう書いてあるのが分かるくらい、みんな悩んでいました。

あれから5年。人手不足はあの頃よりもっと深刻になっています。当時話していたことが、そのまま今の課題として残っている。いや、むしろ今こそ必要な視点になってきたな、と感じています。

給料を「安定させたい」のに、安定しない理由

農業の売上は、市場の値動きと天候というふたつの変動に常にさらされています。

一方で、従業員に払う給料は毎月決まった金額。ここに構造的なズレがあります。

売上が良い月もあれば悪い月もある。でも給料は待ってくれない。

これは経営者の頑張りが足りないとか、そういう話ではありません。単純に、変動するものと固定するものを、そのまま両立させようとしているだけの話です。

このギャップを埋める方法のひとつが、相対取引や契約栽培です。「この条件で、この価格で取引しましょう」とあらかじめ決めておく。これによって、売上の一部を市場の値動きから切り離すことができます。

給料を安定させるというのは、単に頑張って稼ぐという話ではなく、売上そのものの「安定させられる部分」を意図的に増やしていく作業だったんだな、と後になって分かってきました。

儲かっている人ほど、数字を何度も書き直していた

もうひとつ、当時の勉強会で印象に残っていることがあります。

「皮算用でいいから、書いてください」

そうお願いすると、参加者のペンが止まる。皮算用というと、なんだか根拠のない捕らぬ狸の皮算用というイメージがあるかもしれません。でも実際にうまくいっている経営者たちを見ていると、この皮算用を誰よりも繰り返し書いているんです。

単価がいくらで、収量がどれくらいで、経費がこれくらいかかって——という前提を置いて、まず一度計算してみる。

そのあと「あれ、これだと合わないな」というズレに気づく。

じゃあ単価が少し下がったらどうなるか。収量が去年より落ちたらどうなるか。条件を変えて、また書き直す。

これを何度も何度も繰り返す。1回描いて終わりではなく、うまくいっている人ほどこの作業を数え切れないくらいやっている、ということが見えてきました。

正直、これはあまり表には出てこない話です。うまくいっている人に「どうやってるんですか」と聞いても、「いや、特に何も」と返ってくることが多い。本人にとっては当たり前すぎて、わざわざ説明するようなことでもないからだと思います。

昔でいう「そろばんを弾く」という感覚に近いかもしれません。今なら、表計算ソフトやシミュレーションツールを使って同じことをしている、というだけの違いです。

5年経って、あらためて思うこと

人手不足も、給料の安定も、5年前から変わらず——というより、5年前よりも切実なテーマになっています。

だからこそ、当時話していた「変動と固定のギャップを埋める視点」「皮算用を繰り返す習慣」は、今の方がむしろ活きる話なのかもしれません。

正解はひとつではないと思います。契約でギャップを埋める人もいれば、規模を広げて収益の柱を増やす人もいる。どちらにしても、まず自分の数字を一度、皮算用でいいので書いてみる。そこからしか、次の一手は見えてこないんだろうな、と感じています。

農テラスでは、こうした経営の数字づくりや雇用の相談も含めて、農業経営者コミュニティ「農ビジ会」で情報交換をしています。ご興味あれば、無料相談もお気軽にどうぞ。

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