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ブログ 2026.11.07
なぜ、「いい人」の農家ほど稼げないのか。弱気な経営者が交渉で負け続ける本当の理由
朝、作業場の扉を開ける前に、ため息が出る。
「今日もあのパートさん、来てるよな」
自分の会社なのに、行きたくない。
■ 「私、気が弱いんです」
相談を受けていると、
よくこう言われます。
「山下さん、私、気が弱いんです」
商売っ気はあまりない。
人から頼まれごとがあると、
ほいほい引き受けてしまう。
それが本当にその人らしさなら、
それでいいと思います。
ただ、引き受けすぎて疲れ果て、
本業に手が回らなくなっていないか。
一度だけ立ち止まって確かめてみる価値は、
あると感じています。
なぜそう思うのか。
私自身が、まさにそうだったからです。
■ 役職を引き受けるほど、家が回らなくなった
私は1989年に、3代目として親元で就農しました。
弱気だった私は、頼まれると断れませんでした。
地域の役、団体の役。
気づけば、役職をいくつも抱えていました。
自分の時間を差し出しながら、
「頼りにされている」
「毎日が充実している」
そう思い込んでいたのです。
その間、わが家の経営は火の車でした。
私が外で忙しくしているせいで、
家族も振り回され、疲れ切っていた時期があります。
あの頃の私は、
「いい人」でいることを、
仕事だと勘違いしていました。

■ 農業は、野菜を作るだけの仕事ではなかった
農業を始めると、
思っていた以上に「交渉」の場面がやってきます。
農地を借りるとき。
資材を買うとき。
取引先に、売り込みに行くとき。
ここで弱気だと、相手のペースに巻き込まれます。
言われるままの条件では、
こちらに得が残ることは、ほとんどありませんでした。
農業機械の値段もそうです。
私は今でも、高すぎると感じています。
「なぜ、この値段でしか取引できないのですか」
そう尋ねるだけでも、話は少し動きます。
でも当時の私は、それすら口にできませんでした。
なぜ言えなかったのか。
今ならわかります。
いい人だったからではありません。
いい人だと、思われたかったからです。
■ 30代後半、毎日が交渉だった
流れが変わったのは、30代後半。
企業が立ち上げた農業法人の経営に関わってからです。
そこでは、毎日が交渉でした。
農家さんとは、農地を借りる交渉。
役所とは、補助金の申請。
金融機関とは、借り入れの相談。
そして一番大きかったのが、
一緒に働く従業員との交渉です。
人は、雇う側の思いどおりに
動いてくれるとは限りません。
慣れてくると、少しでも楽なほうを選びたくなる。
これは誰にでもある、自然なことです。
さぼりがちな人に、きっぱり言えるか。
遅刻してきた人に、「遅刻はやめてほしい」と伝えられるか。
会社に合わない人に、「辞めてほしい」と告げられるか。
私も、すぐにはできませんでした。
■ 頭の中を「あのパートさん」に乗っ取られる
コンサルとして600件以上の相談を受けてきて、
意外なほどよく聞く話があります。
「また、あのパートさんがいる」
「なんで言うことを聞いてくれないんだろう」
「今日も何か言われるんじゃないか」
気がつくと、苦手な一人のことで頭がいっぱいになる。
そのうち、自分の会社なのに行きたくなくなる。
嘘のような話ですが、本当にあるのです。
言うべきことを言えないまま、
経営者のほうが小さくなっていく。
私にも、身に覚えがあります。
■ 農業に限った話ではないのかもしれません
会社を辞めて独立すれば、
値段の話も、人を雇う話も、
全部自分でやることになります。
これは農業に限らず、
自分で何かを始めた人なら、
一度は通る道なのかもしれません。
■ 「強気、強気、強気」
では、弱気な自分をどうしたのか。
最初にやったのは、
自分が弱気だと認めることでした。
そのうえで、声に出して言い聞かせたのです。
「強気、強気、強気」
これは、ある先輩から教わった言葉です。
いつも強気で、正直に言うと少し怖くて、
私が苦手にしていた先輩でした。
その方は若い頃、
剣道の大会で何度も優勝しています。
剣道は、技だけでは勝てない。
気持ちで負けた瞬間に、打ち込まれる競技です。
人生もビジネスも、剣道と同じ。
気持ちで負けていては、勝ち抜けない。
その先輩は、それを体で知っていました。
私はその日から、
「強気、強気、強気」と
口に出す練習を始めました。
■ 舐められない。威張らない。
もう一つ、セットで唱えた言葉があります。
「舐められてはいけない。威張ってはいけない」
効いたのは、後半でした。
強気を意識しすぎると、
生意気に見えたり、
威張っているように見えたりします。
ただ、もともと弱気な人なら、
少し生意気に見えるくらいで、ちょうどいい。
私の場合は、そのくらいでやっと
「普通に話ができる人」になれました。

強気というのは、
傲慢になることではありませんでした。
相手と同じ高さで、正当に話をすること。
自分の言い分を、遠慮せずにテーブルに置くこと。
それだけのことでした。
■ いい人を演じるのを、やめてみた
弱気のままでも、道が開ける人はいるのかもしれません。
ただ、私の場合はそうはいきませんでした。
「いい人」を演じるのをやめて、
言うべきことを言うようにしてから、
時間も、お金も、家族との時間も、
少しずつ自分の手元に戻ってきました。
頼まれごとを、一つ断ってみる。
値段の理由を、一つ聞いてみる。
小さな「強気」から始めるだけで、
景色はずいぶん変わるのだと、わかってきました。
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一人で抱えると、つい弱気になる場面を、
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