新着情報

What’s new

ブログ 2026.10.28

「農家が減るから農業はチャンス」は本当か?

「山下さん、これから農業いいんでしょ?」

こんにちは。
脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。

最近、この言葉をよく聞くようになりました。

たしかに今、農業界の景気は悪くありません。 九州農政局が発表した2025年の農産物売上高は過去最高。 私のいる熊本でも過去最高でした。

株価は高い、物価も上がっている。 農産物の単価も上がっているものが多い。

「農家はどんどん減っている」 「食料が足りなくなる」 「だから今から農業を始めれば…」

こう考えたくなる材料はそろっています。

ただ、私は1989年に就農して以来、 この業界を37年見てきました。

その目で見ると、この話はもう少し複雑です。

今回は「脱サラして農業を始めたい」という方、 「実家の農業を継ごうか」と考えている方に向けて、 お話しします。


そもそも「安泰な業界」は存在しない

最初に、私の結論を置いておきます。

すべてにおいて安定する業界、 安泰と言い切れる業界は、ありません。

農業がブルーオーシャンだ、という声もあります。 でも、私が現場で見ている景色は違います。

たとえば今、キャベツと白菜がとても高い。

なぜか。

量が少ないからです。

逆に量が増えたら価格は下がります。
農家が少なくなって足りなくなったのではなく、 少し作付け(出荷量)が増えただけで、すぐ値段が下がるからです。

需要と供給のバランスとは、それくらい敏感なものです。

「農家が足りていない」という感覚と、 「農産物が足りていない」という現実は、 必ずしも一致しません。


農家は減る。でも供給量は減らない

ここが今回いちばん伝えたい部分です。

農家が減っているのは事実です。 そして、これからもっと減ります。

私が就農した1989年、 農家は約500万戸、専業に近い人は350万人ほどいました。

今は約100万人。 30年あまりで3分の1になりました。

ここで、ひとつ考えてみてほしいことがあります。

農家が3分の1になったなら、 農産物の供給も3分の1になっていなければおかしい。

でも、なっていません。

つまり、こういうことです。

もともと、必要な数より農家が多かった。

こんなことを言うと叱られそうですが、 数字はそう言っています。


100人の農家が90人になったとき、何が起きるか

分かりやすく、農家が100人いる村を想像してください。 市場が必要としている量も、ちょうど100です。

ここから10人減って、90人になったとします。

「10足りない。値段が上がる。チャンスだ」

一見、そう見えます。 実際、値段は一時的に上がります。

ところが、その瞬間に起きるのはこうです。

残った90人のうち、1人か2人が気づく。

「あれ、畑が余っている」 「需要はある」 「じゃあ、規模を広げよう」

その1人が10倍やれば、 90人で100をまかなえてしまう。

【図解1】

画像

つまり、減った穴は、今いる農家の中の ポテンシャルの高い人が埋めていく。

これが、農家は減っても供給量が減らない理由です。

そして万が一、国内の農家がどれだけ拡大しても 追いつかない、という時代が来たらどうなるか。

輸入が入ってきます。

中国からでなくても、日本は多くの国と外交をしています。 国は「食料が足りなくなる」事態を 起こさないように設計されている。

新規就農者が「うはうは」になる前に、 この二重の安全弁が働きます。


どの業界も「2:6:2」でできている

こういう構図は農業に限らず、 どの業界でもほぼ同じです。

上位20%が安定して成功している。 真ん中の60%がなんとかやっている。 下位20%が少しずつ離脱していく。

いわゆる「2:6:2の法則」です。

農業は、この法則が特にはっきり出る業界だと感じています。

だから「農業は儲かるらしい」と ふわっと入ってきた人が向かう先は、 ほとんどの場合、真ん中の60%か、下の20%です。

一方で、上の20%にいる人たちは本当に景気がいい。 「こんなにいい仕事はない」と言い切る人が 実はたくさんいます。

メディアがまだキャッチアップしていないだけで、 この層は確実に存在しています。

農業に入るなら、最初からこの20%を狙って入る。

これが、脱サラ就農を考える人への私からの答えです。


「何を作るか」より「どこなら勝てるか」

とはいえ、いきなり上位20%と言われても ハードルが高いのは分かっています。

だから、やり方の話をします。

多くの人は、作物から考えます。

「大根が高そう」「トマトが高そう」「イチゴが儲かりそう」

私自身も、親がスイカをやっていたから スイカを選びました。

今思えば、これはかなり危ない選び方です。

大事なのは、何を作るかより、どこなら勝てるか。

農業という業界の中で、 さらにブルーオーシャンを探すイメージです。

【図解2】

画像

具体的には、こんな問いを立ててみます。

・市場が本当に求めているものは何か ・ライバルが少ない分野はどこか ・その分野に、日本一と呼べる人がすでにいるか

すでに突き抜けた先行者がいる場所に 後から入っていくということは、 その人たちに勝たないと上位20%に入れない、 ということです。


20年前のベビーリーフの話

ひとつ、自分が見てきた例を話します。

今から約20年前、私は自分の農場から ベンチャー企業の農業部門に移り、 ベビーリーフを手がけたことがあります。

当時のベビーリーフには、 「ダントツのナンバーワン」がまだいませんでした。

その会社は市場を調べて、こう考えたそうです。

「ここには日本一がいない。 なら、後発でも日本一になれるかもしれない」

そして20年経った今、 その会社はベビーリーフのナンバーワン企業になっています。

今の感覚で言えば、 まだ「定番の勝者」が決まっていないジャンルを 先に見つけて、席を取りにいったような話です。


今はAIで「勝てる場所」を調べられる

当時は、この「日本一がいるかどうか」を 調べるのがとても大変でした。

でも今は違います。 AIに聞けば、ディープリサーチができる。

たとえばカボチャを考えているなら、

「カボチャの需要はどこにあるか」 「日本一のカボチャの産地はどこか」 「日本一のカボチャ農家は誰か」

こういう問いを、Perplexityなどの リサーチ系AIに投げてみる。

もし答えが、

「この産地にはこういう人たちが がっちりと根を張っています」

と返ってきたら、そこは激戦区です。

逆に、

「特に有名な産地はありません」 「突出したスペシャリストは見当たりません」

と返ってきたら。

もしかしたら、そこにチャンスが眠っているかもしれない。

始める前に、これを調べる。 これが実は、農業を始めるときに いちばん最初にやることだと私は思っています。


まとめ

農業は今、景気がいい。 でもそれは「誰がやってもうまくいく」という意味ではない。

農家は減る。でも供給量は減らない。 ポテンシャルの高い農家と、輸入がその穴を埋めるから。

どの業界も2:6:2。 入るなら、上位20%を最初から目指して入る。

何を作るかより、どこなら勝てるか。 日本一が見えない場所に、隙間がある。

いきなり20%には入れません。 数年かけて、必ずそこに入る。

その意気込みで農業に入ってくる人を、 私は本気で歓迎したいと思っています。

厳しい話ばかりでしたが、 「来るな」ではなく「本気で来てほしい」。

そういう話であること、ご了承ください。

農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!


CONTACT US

お問い合わせ

只今、無料経営相談を承っております。
お気軽にご相談ください。