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ブログ 2026.10.08
農家が減り続ける本当の理由 「儲かる家業」と「儲からない家業」の隔たりは”根”にあった
これからの農業戦略
農ビジセミナー『メール講座』第375号”
脳を耕す農業者”のコミュニティ
「農ビジ会」を運営している農テラスの
山下弘幸(やましたひろゆき)です。
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さて、今週のテーマ
農家が減り続ける本当の理由
「儲かる家業」と「儲からない家業」の隔たりは”根”にあった

「いいなー、山下は。
家業があるから就職しなくていいんだよね」
学生時代、友達によく言われました。
たしかにそうでした。
跡を継げば、暮らしていける。
就職活動もいらない。
当時の農家の家業は、
ちょっとした「特権」だったんです。
■ かつて家業は「特権」だった
戦前の農家では、長男が家を継ぐのが当たり前でした。
優秀かどうかは関係ありません。
次男以下は、自分で稼ぎ口を探すしかない。
だから必死に勉強して、
いい大学に入り、いい会社に入る。
その流れが、高度経済成長を支えたとも言われます。
今で言えば、
「親が人気店のオーナーで、
のれんを継げば食べていける」。
そんな感覚に近いかもしれません。
私の近所にも、
長男が早々に「継がない」と宣言して次男が継いだ家や、
娘さんの家に養子さんが入って継いだ家が何軒もあります。
カタチはいろいろでも、
「就職せずに暮らせる家業」は、
それだけ価値のあるものでした。
■ その特権が、手放されはじめた
ところが、いつの頃からか
親が子どもに「継げ」と言わなくなりました。
理由はシンプルです。
儲からなくなったから。
これは私の勝手な見立てですが、
サラリーマンの所得が
農家の所得を上回ったあたりから、
流れが変わったように感じています。
継がせても食べていけないなら、
無理に継がせない。
子を思う親として、自然な判断です。
■ バブルの年に継いだ三代目
私の親が継がせたかった理由は、
たった一つ。
スイカで儲かっていたからです。
親として、子に良い環境を残したい。
その気持ちは、私も人の親になってよくわかります。
ただ、ここに落とし穴がありました。
その儲けが「仕組み」から生まれていたのか。
それとも、相場や時代の追い風が
たまたま良かっただけなのか。
私が家業を継いだのは1980年代、
バブル景気の真っただ中でした。
ところが間もなく、景気は泡のように消えます。
あとから「バブル」と名前がついたのも、
その消え方を見れば納得です。
親は時代の波に乗った農家でした。
「作れば売れる」時代に乗ったのです。
私は、大きな不景気の波にのまれて
溺れかけた農家でした。
作っても売れない時代にのまれたのです。
同じ畑、同じ作物。
違ったのは、時代だけです。
そこで気づかされました。
農業は、自分の実力以上に
景気や経済に左右される商売なんだと。
■ 親の仕組みを、壊して作り直した10年
私は親のやり方が性に合わず、
結局、自分でその時の時代に合った
仕組みを作り直すことにしました。
その10年間は、
食べるものにも困るほどの貧乏暮らしです。
きっかけは、無計画な投資でした。
建てた温室の支払いが経営をじわじわ圧迫し、
農業所得はほぼゼロ。
ちょうど結婚して、子どもがまだ小さい頃です。
旅行どころか、
外食や遊園地に連れていく余裕もありません。
子どものためにコツコツ積み立てていた預金も、
結局、切り崩しました。
子どもに何もしてやれない。
それが、いちばんこたえました。
親の言うとおりにしていれば、
もっと楽だったかもしれません。
でも、今振り返ると
早いうちに気づけてよかったと思っています。
若くして継いだからこそ、
若いうちから仕組みづくりに取り組めた。
40歳になる頃には、
その仕組みがひと通り形になっていました。
■ 農業経営も、まず「根」から
農家は作物を育てるとき、
まず根をしっかり、深く張らせます。
目に見える葉や茎がいくら立派でも、
根が浅いと、病害虫や天候不順にあっけなく負ける。
ちょっとした大雨で根腐れを起こすこともあります。
農業経営もまったく同じだと、
長くやってきて見えてきました。
いい年もあれば、悪い年もある。
だから、根を張る。
その「根」にあたるのが、仕組みです。
仕組みは、3つの段階で育っていきます。
▼第1段階:根を張る
・つつがなくモノができる仕組み
・そのモノをおカネに変える仕組み
・モノを生み出すために働ける仕組み
この3つが揃って、ようやく根が張ったと言えます。
▼第2段階:茎と葉を広げる
・つつがなく供給できる仕組み
・つつがなく利益が出る仕組み
・つつがなく働いてもらえる仕組み
ここまで来れば、
農業経営としては「出来上がった」と言っていい段階です。
▼第3段階:実をつけ、次の世代へ
・つつがなく選ばれる仕組み
・つつがなくお金が増え続ける仕組み
・つつがなく任せ続けられる仕組み
子どもや孫に「家業」として手渡せるのは、
この段階まで育った仕組みなのだと思います。
■ 離農と人手不足は、同じ根っこ
時代は必ず変わります。
仕組みがあれば、
その仕組みを時代に合わせて変えていけばいい。
でも、仕組みそのものがなければ、
波が来たときに一気に流されてしまいます。
人手不足も、同じところにつながっています。
たとえば、就職先を選ぶとき。
「給料も休みも、出るかどうかわからない会社」に
入りたい人はいませんよね。
会社員の方が安心して働けるのは、
給料や休みが出る仕組みが
すでに出来上がっている組織だからです。
農家も、人が足りないから人を雇います。
でも、そこに仕組みがなければ、
給料も休みも十分には出せない。
だから人が集まらず、
結局は人手不足は続くのです。
農家が減り続けているのも、
人が集まらないのも、
根っこは同じところにある。
私には、そう見えています。
■ 仕組みづくりは、面白い
仕組みづくりには、とにかく時間がかかります。
私も10年かかりました。
でも、仕組みができると、農業は安定します。
そして、何より面白くなる。
誰かが作った仕組みの中で働くのではなく、
自分で仕組みを作っていく。
これは、農業という仕事の大きなやりがいだと感じています。
作物を育てるのと同じくらい、
仕組みを育てることに目を向けた農家が、
10年後も畑に立っている。
600件以上の現場を見てきて、
そんな景色が見えてきました。
さて、これからどんな時代が来ると思いますか?
そして、あなたの経営の根は、
いまどのくらい深く張っているでしょうか。
この仕組みづくりができていない農家しかいない産地は
これからますます厳しくなり、
逆に仕組みづくりができている農家が多い産地は
生き残り続ける。
これが私の未来予測です。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!