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ブログ 2026.09.01
家族経営がつぶれない理由
震災・台風でも揺るがない家族経営の強み──蓄えとゼロ従業員という選択
契約が打ち切られた日、僕はパートさんたちに「申し訳ないけど、しばらく休んでほしい」と伝えるしかありませんでした。1週間分の給料だけを渡して、別の働き先を探してもらう。あの時のことは、37年間農業に携わってきた中でも、いちばん苦しい記憶のひとつです。
小松菜の契約栽培をしていた頃、市場価格が暴落したタイミングで取引先から契約を打ち切られました。行き場を失った小松菜を自分でおろし売り市場に持ち込む日々。従業員の給料は、売上がゼロでも出ていきます。
農業を始めて37年。家族だけでやっている農家、家族にパートさんが加わっている農家、法人化して従業員を雇っている農家。現場を見てきた中で、経営のかたちはさまざまですが、ひとつだけはっきりしていることがあります。それは、家族経営が驚くほど潰れにくい、ということです。
こうした経験を振り返るうちに、家族経営がなぜ長く続くのか、その理由が見えてきました。
蓄えがある家は、悪い時期を越えられる
うちの父はいつも「いい時に儲かったお金は使わず、悪い時のために残しておくんだ」と口にしていました。地震、台風、大雨、価格の暴落。農業をしていれば、避けられない場面が必ずやってきます。
お茶農家を見ていて、印象に残っている話があります。ある時期、お茶の価格が大きく落ち込み、正直厳しい状況が続いていました。それでもやっていけていたのは、その方の親御さんが残してくれた蓄えのおかげだったそうです。
家族経営の場合、こうした蓄えが事業を守る土台になっているケースが多いように感じます。逆に言えば、儲かった時こそ、次の悪い時期への備えを考えるタイミングなのかもしれません。
【図解1】

従業員を雇わない選択肢がある
家族経営が潰れにくい理由は、蓄えだけではありません。人を雇わなくても事業が回る、という構造そのものが強さになっています。
従業員がいれば、当然その分の給料を確保し続ける責任が生まれます。契約が打ち切られたあの時、僕がパートさんに辞めてもらうしかなかったのも、3ヶ月分の経費を確保できていなかったからでした。相場は、だいたい3ヶ月から半年のうちに動きます。その期間さえ乗り越えられれば、雇用を続けられたかもしれません。
雇用を選ぶなら、3ヶ月分の経費をあらかじめ確保しておく。これも、あの経験から学んだことのひとつです。
いつでもやめられる状態を意識する
農業コンサルをしていながら、僕は「農業をやめる」という選択肢を、わりと積極的に伝えています。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、これには理由があります。
僕自身、27歳で両親から農業を引き継ぎ、25年間現場に立ち続けたあと、現場から退いてサポート側に回りました。うちの農業は、絶好調のタイミングで一度、区切りをつけたことになります。
「もうダメだ、儲からないからやめよう」というタイミングでやめるのは、実はいちばん苦しいやめ方です。やめるなら、絶好調の時。うまくいっている時こそ、次の展開を考える。これが、家族経営を長く続けるための、もうひとつの視点だと感じています。
【図解2】

好調な時こそ、次への備えを
震災も台風も、価格の暴落も、農業をしていれば避けられない場面がやってきます。そのたびに気づかされるのは、蓄え、雇用の持ち方、そしていつでも動ける身軽さ。この3つが、家族経営を支えているということです。
もちろん、家族経営だけが正解というわけではありません。従業員を雇い、規模を広げていく経営にも、それぞれの強みがあります。ただ、家族経営の強さの正体を知った上で、あえて雇用を選ぶのか、あえて家族だけで続けるのか。そんな選択の材料になれば、と思います。
いい時ほど、次の展開を考える。そんな視点を持てると、農業という事業との向き合い方も、少し変わってくるかもしれません。
こうした経営の視点をもっと深めたい方は、農テラスの無料相談や農ビジ会でも詳しくお伝えしています。
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