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ブログ 2026.07.15
企業の農業参入なぜ4年目で心が折れるのか
今回のテーマは「社長から農業やれと言われました」です。
一見、農業者の方には関係ない話に思えるかもしれません。でも最後まで読んでいただくと、農業がどれだけ難しいことなのか、あらためて気づいていただけるはずです。
私と農業の関わり
私はもともと1989年、37年前に親元就農して農家になりました。皆さんと同じ、普通の農家です。
37歳のとき、ベンチャー企業とのタイアップがきっかけで、農業法人の社長を任されました。そこで農業とビジネスの両方を学ぶ機会に恵まれたんです。
この経験をもとに、農業とビジネスを融合させた新しい農家を全国に増やしたいと考え、株式会社農テラスを立ち上げました。
農テラスは「新規農業参入コンサルタント」の会社です。すでに農業をやっている方に「ああしろ、こうしろ」と言える立場ではありません。ゼロから企業が農業に参入するときのサポートに特化しています。
これまで600件近い企業の農業参入案件に関わってきました。そこで必ず出てくるパターンがあります。
「社長が農業やると決めた」というあるある
中小企業から上場企業まで、規模を問わずよくあるのがこのパターンです。
社長がトップダウンで「うちも農業をやる」と決める。そして新規事業部の担当者が呼ばれます。
「実は社長が農業事業をやることに決めた。ついては君が担当だ」
担当者からすれば、青天の霹靂です。
名指しされる理由は2パターンある
ここで少しシビアな話をします。
担当者に選ばれる理由は、大きく2つに分かれます。
一つは、優秀だから期待されて指名されるパターン。もう一つは、正直に言うと「他の部署でうまくいかなかったから、農業事業にでも」という配置転換のパターンです。
どちらのパターンでも、担当者に待っているのは同じ現実です。
なぜ担当者の心が折れるのか
トップが農業を甘く見ていると、担当者は本当に辛い思いをします。
理由は、経営陣がすぐに結果を求めることです。
最初の2〜3年は「農業だから仕方ない」と我慢してもらえます。ところが4年目、5年目になっても赤字が続くと、プレッシャーは一気に強まります。
下の図は、その典型的な推移です。

気づいたときには、担当者がいなくなっている。これまでたくさんの現場を見てきましたが、こうしたケースは本当に多いです。
一般的な事業と農業は根本的に違う
担当者が追い詰められる背景には、もう一つ理由があります。
一般的な事業には、成功のためのノウハウやマニュアルがあります。ところが農業には「こうすれば必ずうまくいく」という手順書が存在しません。
天気は自由になりません。価格も思い通りにはなりません。植物の成長をコントロールすることもできません。
一般的な事業と農業の違いを整理すると、下のようになります。

これだけ不確定要素が多い世界に、農業者の皆さんは日々向き合っているということです。
「なんとなくできそう」に見えてしまう罠
農業をやっている人は世の中にたくさんいます。おじいちゃんおばあちゃんたちも、ぼちぼちと農業をやって幸せそうに暮らしている。
そう見えるからこそ「自分たちにもできるはず」と軽く考えられてしまいます。
そして「君ならできる」「君がやりなさい」と、白羽の矢が立った担当者だけが、そう簡単にはいかない現実に直面するのです。
現場と経営陣の間に立つ仕事
この「簡単にはいかない理由」を言語化して、経営陣にきちんと伝えるのは簡単ではありません。
私はこの役割を代行してきました。現場の実情を把握し、経営陣には「農業というビジネスはこういうものです」と現実を伝える。その間に入るコンサルティングを、今も続けています。
農業者の皆さんへ
今日は少し変わった角度からのお話でした。
「社長から農業やれと言われた」担当者の苦しみが分かる人は、正直まだ限られています。
でも、これを聞いて気づくことがあります。どれだけ大きな企業が、どれだけ優秀な人材を投入しても、うまくいかないことがある。それほど難しいことを、皆さんは日々やっているということです。
さすがです。
農家のお悩みについて、いろんな角度からのご質問・ご相談を受け付けています。気になることがあれば、お気軽にお寄せください。