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ブログ 2025.10.30
気楽な農業ライフのはずが、いつの間にか“ストレス3倍に
農家の脳を耕す農業講演家の山下弘幸です。農業歴36年、
稼げる農家を全国に。
農業、農村の課題と対策を分かりやすく解説しています。
今日のテーマは
気楽な農業ライフのはずが、いつの間にか“ストレス3倍に”
~家族経営から雇用型へ変わるときのリアルな壁~
「自然の中で、自分のペースで働けたら…」
「人間関係に悩まされない生活がしたい…」
そんな想いから、農業という選択肢を夢見る人が増えています。特に、都市部のビジネスパーソンにとっては、土に触れ、季節とともに暮らす生き方は、まるで別世界のように魅力的に映ります。
でも、そんな「理想の農業ライフ」を実現しようと踏み出したとき、多くの人が直面するのが “経営者の壁”です。これは現役の若手農家にもよく見られます。
理想の農業像はこんな感じ
多くの人が思い描く農業ライフは、こんな感じかもしれません。
自宅のすぐそばの畑で、夫婦2人で朝から収穫作業
昼には家で手作りのランチを食べて、午後は出荷準備
忙しいときだけ近所のパートさんが手伝いに来てくれる
作物ができたら、SNSでお客さんに直接販売
夫婦でこぢんまり、自分たちで時間をハンドリングし、自分たちの生活を設計する。
誰かに指示されるわけでもなく、満員電車に揺られることもなく、自然とともに生きる。
これは、確かに“憧れの暮らし”ですし、ある意味で本質的な幸福の形かもしれません。
でも――
このスタイルで農業を成立させるのは、実はとても難しいのです。
成立しない理想と、現実の境界線
まず、小規模な農業では収益が限られます。
市場価格に左右される野菜の単価や、自然災害・病害虫などのリスク。
そして、人手が足りないときの負担はすべて自分たちに降りかかってくる。
「じゃあ規模を拡大して、もう少し収益を安定させようか」と思ったときに、
次の壁が立ちはだかります。
それが、「人を雇う」というフェーズへの突入です。
親の引退、人手不足…そして第三者を雇う現実
家族経営の多くは、親と一緒にスタートします。
農業経験豊富な親の背中を見ながら、日々の作業を覚えていく。
ところが親もいずれ高齢になり、引退を迎えます。
すると残された自分だけでは回らない。
「人を雇わないと、もう無理だ…」と気づく瞬間が来るのです。
ここから、自由だった農業ライフが一変します。
“人を雇う”という壁は、想像以上に高い
私も25歳の頃、雇用を始めました。何もかもが初めての経験ばかり。その時雇ったのは35歳の女性パートさん。私より年上の方で、社会経験も豊富。
雇われる方は雇われ慣れているのに、雇う側が初めてというパターン。
何も知らない自分にかなり焦りました。
人を雇うというのは、単に「労働力の確保」ということではありません。
採用の方法がわからない
そもそも、
・求人募集の書き方がわからない
・給料をいくらに設定していいかわからない
・面接で何を聞けばいいのかわからない
・雇用契約、賃金、労働時間、保険の手続き…
更に雇い始めたら
・何をどう教えていいかわからない
・作業内容のマニュアル化、指示の仕方、評価基準
・会社のルール(規定)を決める
・トラブルが起きたときの対処
しかも、相手は“家族ではない”。
これまでのように「言わなくても通じる」関係性ではありません。
つまり、農業経営は「家族の慣れ合い」から「会社的な組織運営」へと変わっていく
全く違うフェーズに入るのです。
気を使う相手が3倍に増える
一番厄介なのはここかもしれません。
これまで家族経営だった場合、親の意見も聞かなきゃいけない
(引退しているのにたまに現場にやってきて口をはさんでくる)
雇った人にも気を使わなきゃいけない
・雇った人にも気を使わなければいけない
・でも仕事はきちんとしてもらわなければ困る
・叱るとすぐに辞めてしまうので、あまり強く言えない
家族とも意思疎通しなきゃいけない
(身内は甘えがあるからすぐ喧嘩になる)
気を使う相手が1人→3人になる感覚です。
「人を雇えば楽になると思ってたのに、むしろストレスが増えた…」
こんな声を、多くの農家さんから聞きます。
雇われるストレス vs 雇うストレス
農業に憧れる人の多くが、「会社での人間関係に疲れた」経験を持っています。
上司や同僚との摩擦、評価制度への不満、気を使う日々。
だから、農業=ストレスフリーな働き方に見える。
ところが、いざ農業で経営者になってみると――
・従業員の態度が気になる
・ちゃんと教えても伝わらない
・急に辞められて困る
・保険・労務・行政対応などの雑務が増える
今度は、「雇う側のストレス」がのしかかってくるのです。
つまり、多くの雇用初心者は
従業員が出社しない日がホッとする。って感じているのです。
成功する農業経営者に共通する力とは?
では、どうしたらいいのか。
答えはシンプルです。
「人を使う力」を、経営者として育てていくこと。
農業は“技術”だけでなく、“マネジメント”でも成り立っています。
だからこそ、成功している農家は例外なく「人を使うのがうまい」のです。
まとめ
最初は、親がやっている農業をただ継げばいいと思っていた。
家族で農業やってそれで所得を得られて暮らしが成り立てばそれでいいと思っていた。
しかし、やがて親が引退するころ
初めて雇用型の農業の扉を開く。
そこで初めて理想と現実のギャップに驚くことになるのです。
でも、その壁を越えられる人は大きく成長します。
逆に、越えられないと感じた人は、思い描いていた理想とのギャップに苦しむかもしれません。
最初は、気楽な農業ライフのつもりだった。
野菜や果実を作るのが農業。こんな幸せな職業はない。
なぜなら煩わしい人間関係から解放されるからです。
しかし、農業をやりながら雇用を始めると3倍以上のストレスがかかります。
こんなことなら会社務めで雇われていた方が楽だった・・・
雇われるストレスと、雇うストレス
あなたは、どちらに耐えられますか?
そして、どちらに挑戦してみたいですか?
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