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ブログ 2026.11.06

なぜ、稼いでも手元にお金が残らないのか。農家の私が4800万円の借金で知った「後払い」の落とし穴

畑を耕した。肥料をまいた。種を植えた。
この時点で、売上はまだ1円もありません。
でも、請求書だけは確実に届きます。


■ 農業は「先にお金が出ていく」商売

農業は、売るより先にお金がかかります。

田畑を準備して、耕して、
肥料をまいて、種を植える。
収穫して売上が入るのは、何か月も先です。

それでも続けられるのは、
農協や資材屋さんが
代金の回収を待ってくれるからです。

経営の言葉でいえば「買掛金」。
わかりやすく言えば「ツケ」です。

世の中には、この後払いのしくみがたくさんあります。
定食屋さんも、食べ終わってからお会計。
家や車も、頭金を入れて、あとはローンで月々払う。

便利なしくみです。
ただ、この後払いが、
農業経営をいちばん危うくするところでもありました。


■ 27歳、4800万円の温室

私は1989年に、3代目として親元で就農しました。

就農した当初は、恵まれていました。
ハウスも、作業場も、農機具も、
すべて親の代でそろっていたからです。

あとは種と肥料と農薬を買うだけ。
今思えば、かなり利益の出やすい状態でした。

ところが数年後、
それらを一気に買い替える時期が来ます。

27歳のとき、温室を新しく建てました。
金額は4800万円。
もちろん、そんなお金は持っていません。

農協からお金を借りてのスタートでした。

後払いのしくみに、私は助けられました。
同時に、そこから支払いに追われる日々が始まります。

支払いさえなければ、農業ほど面白い商売はない。
でも支払いに追われ始めると、
こんなに苦しい商売もない。

自営業や起業を経験した方なら、
この感覚に覚えがあるかもしれません。


■ スイカ1個の「材料費」は、たった1割

不思議なのは、農業の材料費そのものは、
実はとても安いことです。

当時、スイカの種は1粒20円ほど。
肥料や農薬は、1個あたり80円くらい。
それが育つと、1個1000円で売れました。

材料費は、売値のおよそ1割です。

材料費だけなら、
スイカを1個つくるたびに900円残る計算です。

昔は「薬九層倍(くすりくそうばい)」
「坊主丸儲け」という言葉があったそうです。
薬は原価が1割ほどで、残りは儲け。
お坊さんはお経を唱えてお布施をいただくので、原価はゼロ。

そして「百姓は百層倍」とも言われたと聞きます。
さすがに言い過ぎですが、
昔は種を自分で採り、堆肥も自分でつくっていました。
今でいえば、仕入れゼロの商売に近い感覚です。

では、なぜ私は苦しかったのか。
材料費ではなく、
施設や機械という「大きな支払い」を、
後払いで抱えていたからでした。


■ 2000万円のハウスを、200万円で

コンサルとして600件以上の相談を受けてきて、
経営がうまく回っている方には、
共通点があると感じています。

出ていくお金が、少ないのです。

私が運営している「農ビジ会」にも、
これがとても上手なメンバーがいます。

広島のあるメンバーは、
破れたまま使われていないビニールハウスを見つけると、
すぐに持ち主の方へ声をかけます。

「このハウス、野菜はもう作らないんですか?」
「去年、腰を痛めてね。縮小しようと思って」
「このハウス、どうされるんですか?」
「使う人がいれば、譲ってもいいんだけど」
「では、私に譲っていただけませんか」

話はまとまり、約2反(2000㎡)のハウスを
30万円で譲ってもらいました。

新品で建てれば2000万円。
中古でも1000万円ほどかかる広さです。

もちろん解体費、運ぶ費用、建て直す費用がかかり、
全部で200万円ほど。
それでも、新品の10分の1です。

彼は、こうやって今の施設をそろえてきました。

中古を探す手間。
使われていないものを「譲ってください」と言う勇気。
ずうずうしく借りてみる気持ちの強さ。

言葉にすると簡単ですが、
実際にやれる人は多くありません。
私自身、若い頃はできませんでした。


■ 農業に限った話ではないのかもしれません

私が今の会社を始めたとき、事務所はありませんでした。
2DKの狭いアパートの台所が、私のオフィスでした。

見栄えのいいビルに事務所を構えたくなる気持ちは、
私にもありました。
でも、売上が読めないうちは、
毎月の家賃が重くのしかかります。

これは農業に限らず、
自分で何かを始めた人なら、
一度は通る道なのかもしれません。


■ 穴の開いたバケツ

農業の売上は、天気や市場の値段に左右されます。
「今年は必ずこれだけ売れる」とは、誰にも言えません。

だから、出ていくお金を小さくしておくと、
不作の年でも慌てずにすみました。

親から事業を引き継ぐ場合は、
もう一つ難しさがあります。
引き継いだ時点で、すでに支出が膨らんでいることが多いのです。

実は、わが家もそうでした。
売上という水を入れても、穴の開いたバケツのように、
どんどん漏れていく。

だから後継者の最初の仕事は、
水を増やすことより、穴をふさぐことだった。
そう気づくまでに、私はずいぶん時間がかかりました。

売上を伸ばすことも大事です。
でも、支払いの少ない経営は、
思っていた以上に強かった。
4800万円の借金を返し続けた日々から、
そうわかってきました。


▶ 次はこちらもどうぞ
農業の未来はこの2つしかない
https://note.com/nouterasu_/n/n39ba5970d918


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