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ブログ 2026.09.13
農家の9割が気づいていない、農業界に眠る90兆円の伸びしろ
こんにちは。脳を耕す農業経営戦略家の山下弘幸です。
先日、あるセミナーで「経営とは何か」という話をしていて、ふと気づいたことがあります。
「営農」と「経営」。この二つの言葉、実はまったく違うものなのに、同じもののように使われていることが多いんです。
私の親世代(1945年前後生まれ)の農業は、営農でよかった。国や農協の指導どおりにやっていれば、それなりに食べていけた時代でした。
でも私たちの世代――ちょうど平成元年前後に就農した世代――は、営農から経営への変わり目にぶつかりました。誰も教えてくれない中で、「経営って何だろう」ともがきながらここまで来た、というのが正直なところです。
経営とは、ヒト・モノ・カネ・情報・時間を管理すること
一言で言うと、経営とは「ヒト・モノ・カネ・情報・時間」という5つの資源を管理して、利益を追求すること。これに尽きます。
もし後輩から「経営ってなんですか」と聞かれたら、こう教えてあげてください。

ここで大事なのは「利益の追求」という部分です。経営はボランティアではありません。お金と利益を追求しない活動は、経営ではなく「運営」と呼ばれます。
時給500円だった頃の話
私が一番儲かっていなかった頃――32歳、平成10年くらいの話です。
とにかくがむしゃらに働いていました。1日14時間くらい、休みもなく。当時から記録だけはつけていたので、年間の労働時間を計算してみたことがあります。
4000時間でした。年間です。
その一番どん底だった時期、農業所得はマイナス150万円。売上は2500万円あったのに、妻の蓄えを切り崩す日々でした。そこから頑張って、なんとか農業所得200万円くらいまで持っていけた年もありました。
でも、農業所得200万円で年間労働時間4000時間。時給に換算すると、500円です。
正直、この数字を出したとき「これはダメだ」と思いました。同じように「時間の使い方、考えたことありますか」と聞かれて、ドキッとする方も多いのではないでしょうか。ヒト・モノ・カネ・情報も大事ですが、最終的にはこの「時間」がすべてを決めているように感じます。
農業に流れてくるお金は、9兆円しかない
さて、ここからが今日の本題です。
農産物を売って農家に流れてくるお金――米、野菜、果実など全部合わせて、日本全国でだいたい9兆円です。平成元年がピークで11兆円あったものが、じわじわと減ってきています。
9兆円と聞くと大きく感じますが、これを認定農業者24万人で割ると、1人あたり1000万円弱。市場や農協を通じて、いわゆる「委託出荷」だけで生きている限り、この9兆円のパイの中で椅子取りゲームをしていることになります。
でも、ここで視点を変えてみるとどうでしょう。

農業という「原材料」の部分は9兆円。でも、それを取り巻く食料産業全体では55兆円、加工まで含めた食品産業としては約90兆円という市場があります。
日本のGDP550兆円のうち、製造業(トヨタ、ソニー、パナソニックなど)が稼いでいるのが60兆円。それと肩を並べる規模のマーケットが、実は食品産業の中に存在しているんです。
川上に立つか、川下に立つか
これまでの農業は、市場や農協に委託して、決まった価格で買い取ってもらうという構造でした。これは決して悪いことではなく、需要と供給のバランスで価格が決まる仕組みと共存してきた歴史があります。
ただ、今うまくいっている農家さんを見ていると、共通点があります。それは、この90兆円の流通の中で、自分の立ち位置を「川上」に近いところへ動かしていること。
生産するだけでなく、加工する。仕入れる。流通させる。直接お客様とつながる。
トラクターを持っている、畑を持っている、作る技術を持っている——これはもう、企業がどれだけ参入しようとしても簡単には真似できない強みです。この強みを持ったまま、90兆円のマーケットのどこに自分を置くかを考える。それが、これからの経営だと感じています。
おわりに
「農業所得が9兆円しかない」と嘆くこともできます。でも「食品産業として90兆円ある」と捉え直すこともできる。同じ数字でも、見る場所を変えるだけで景色はまったく違って見えてきます。
私自身、時給500円だったあの頃には想像もできなかった景色です。
もっと深掘りして考えてみたい、自分の経営にどう当てはめればいいか相談したいという方は、農テラスの無料相談も承っています。農ビジ会という農業経営者のコミュニティもありますので、興味があればぜひのぞいてみてください。
農業界を明るく照らす農テラス
今日も一緒にこちらの脳を耕しましょう!